都営住宅に応募
そして、ついに限界を感じ、マンションを手放すことを検討し、いまは都営住宅に応募しています。マンションを売却できれば維持管理費等の固定支出が抑えられ、売却益を手に入れることが可能です。家賃の安い都営住宅に引っ越せば、売却益で蓄えもでき、多少なりとも生活は楽になります。
失業給付が終わり、夫婦2人で月額24万円程度にもなる年金を受け取っていても、井田さん夫婦にとっては到底足りるものではありません。夫婦ともに働きながら収入を得て、貯蓄もできないまま不安な老後の生活を送ることに。都営団地の抽選結果をいまかいまかと待っています。
職場結婚のリスク
今回の井田さんのように、倒産などの理由で退職金を受け取れなかったという事例は少なからずあります。倒産した場合に給与の優先順位は高く、これまで働いた賃金の分は優先的に守られます。しかし、退職金については優先順位は低く、もし倒産という事態になってしまうと受け取れないケースもあるのです。中小企業のいくつかのケースでは、今回のように業績不振を知らず、社員には一切伝えられないまま、朝出勤したら倒産していたなんてことも。
夫婦ともに同じ会社に勤めている場合、収入源がその会社に集中してしまいます。そのため、倒産に限らず、会社の業績悪化やリストラなどが起こると、夫婦同時に収入を失うリスクがあります。これは、片方が専業主婦(夫)の場合よりも、家計への打撃が大きくなる可能性もあるのです。退職金制度も同じ会社のものに依存するため、制度の変更や減額があった場合、老後資金計画に大きな影響が出ます。
井田さん夫婦はこうしたリスクを抱えていたにもかかわらず、現役時代に高い収入を得ていながら家計管理ができていませんでした。貯蓄がほとんどなかったことも大きな問題です。高い収入に甘んじて支出をコントロールできなかったがために、老後の生活が破綻してしまったのでしょう。
子供たちが独立し、お金が掛からなくなったあとは絶好の資産形成のタイミングです。当然、人生を充実させるために多少贅沢してこれまでできなかったことをするのもいいですが、将来自分たちの生活にどの程度資金が必要になるのかは、最低限のラインとしてしっかり認識する必要がありました。
いまの時代、勤務先の倒産という不慮の事態も考えられない話ではありません。2024年上半期に倒産した中小企業の数は、帝国データバンクの調査で4,990件。東京商工リサーチの月次データを見ても増加傾向にあることから、相当数の倒産が発生していると考えられます。退職金を老後の資金の柱としている人も多いでしょう。しかしそれだけでなく、しっかり資産形成を行い、公的年金の制度を活用しながら自分たちだけのマネープランを構築していきましょう。
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