「いくらなら借りられるか」よりも重要な“当たり前”のこと
住宅を購入する際は「自分の年収ならいくらまでなら借りられるか」という目安を「返済比率(または返済負担率)」で計算します。返済比率とは、年収に占める年間返済額の割合のことで、次の計算式で求めることができます。
まず、上記式の「年間返済額」とは、住宅ローンの返済額だけでなく、スマートフォンの分割払いやクレジットカードのリボ払いなど、住宅ローン以外の借入返済額も含めます。
また「年収」は、サラリーマンなら社会保険料や所得税などを差し引く前の「税込み(額面)年収」を指します。
ちなみに、住宅金融支援機構「フラット35」の返済比率は、年収400万円未満の場合は30%以下、400万円以上の場合は35%以下となっています。また、民間金融機関の住宅ローンの返済比率はさまざまですが、おおむね30~35%程度までといわれています。
しかし、本当に重要なのは、「いくら借りられるか」ではなく、「いくらなら完済まで滞りなく返済できるか」です。筆者の業務経験上、ストレスなく完済できる返済比率は「20%以下」が妥当と考えます。
また、住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2024年4月調査)】」でも、返済負担率の平均値は19.2%となっています。
A夫婦は「家計破産」の危機に陥っていた
A夫婦の場合、Aさんは32.6%、Bさんは21.8%と“借りられる範囲”には収まっていたため、審査も難なく通り、無事に住宅購入資金を借り入れることができました。
ただし、かつて住んでいた賃貸の家賃は16万円です。10万円も住居費の負担が増えています。また、今後、子どもが大きく育つにつれて、教育費などの子どもに関連する費用負担も増えていくでしょう。
仮に、子どもが保育園から小中高は公立に、大学は理系の私学に下宿して通った場合、筆者の試算で約1,800万円※ほど必要です。
※ 文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果」「「子どもの学習費調査」学校種別の学習費(令和3年度)」、独立行政法人日本学生支援機構「令和4年度学生生活調査結果」、厚生労働省「地域児童福祉事業等調査結果の概況令和3年」などをもとに、筆者が試算。
この増えた分の負担額は、Bさんの育休終了後、給与が元の額に戻ったとしても補い切れません。
このまま夫婦が昇給しながら65歳の定年まで勤めても、また、現在変動金利で返済している住宅ローンの金利がこのまま変わらなかったと仮定しても、Aさんが54歳になったとき、つまり子どもが大学に入学したタイミングで家計が破産しかねない計算です。
