現在のお墓を引き払い、新しい場所に引っ越しすることを「墓じまい」といいます。さまざまな理由で墓じまいをする人が増えていますが、今回は弘中純一氏・小谷みどり氏・横尾将臣氏監修の『いざというときに困らないために 今から考える 実家じまい・墓じまい』(ナツメ社)から、家族が集まるお正月に話し合っておきたい「墓じまい」というテーマについてご紹介します。
墓じまいとは何?そもそもお墓はどうなっているの?
「実家じまい」と同様に、「墓じまい」という言葉もよく聞くようになりました。「墓じまい」とは、今あるお墓の墓石を撤去して更地にし、土地を墓地管理者に返すこと、さらにその後、お墓を新しい場所に引っ越しすることまでを言います。
ここでは、お墓を撤去して引っ越すことを「墓じまい」と呼びます。お墓を引っ越すことを「改葬」とも言います。実際に引っ越すときには、お墓のある市区町村の役所に「改葬許可申請書」を提出します。
また、厚生労働省から毎年発表される衛生行政報告例では、お墓を引っ越した件数を「改葬件数」と呼んでいます。この改葬件数を見ると、2022年度は全国で15万1,076件。2021年度の11万8,975件より3万2,101件も増えています。お墓の引っ越しをする人は年々増えているのです。
多くの人が「墓じまい」をする理由には、次のようなものが考えられます。
- お墓が遠く、お墓参りに行くのが大変。
- お寺とのつき合いが負担。
- 子どもにお墓の管理をさせたくない。
- 継承者がいない。
お墓が自宅から遠く、お墓参りに時間もお金もかかる。お墓がお寺にあると、お布施などの金銭的負担が大きい。このように感じている人は、実は多いのです。
ですから、「子ども世代にはお墓の管理を継承させるのは申し訳ない」と、自分たちの代で「墓じまい」を考えるようになります。また、独身、子どもがいない人も増え、そもそも継承者がいないという悩みもあります。
お墓の近くに住んでいたり、お寺とのつき合いが日常だったりした親世代とはライフスタイルが変わり、お墓の継承が難しくなりました。それぞれの事情でお墓から足が遠のいてしまうと、「無縁墓」になる可能性も。近年、空き家の放置と同様に、管理されずに放置された無縁墓の増加は社会問題になっています。
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一級建築士事務所アルド住宅研究所主宰・宅地建物取引士
国立大学建築工学科卒業後、一部上場企業にて一戸建てハウジング事業の開発プロジェクトに、その後、建築事務所にてマンションの内装プレファブシステムの技術開発に従事する。独立して建築事務所を立ち上げ、住宅の設計、施工、リフォーム、売買などの業務を行う。現在は、設計、不動産売買、投資、賃貸、リフォームなど住まいのコンサルティングをメインに活動。Webサイトで住宅・不動産に関する記事を執筆。ホームページにて、情報発信や住宅に関する無料相談を受けている。
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連載いざというときに困らないために 今から考える 実家じまい・墓じまい
一般社団法人シニア生活文化研究所
代表理事
1969年大阪生まれ。奈良女子大学大学院修了。第一生命経済研究所主席研究員を経て、2019年より現職。専門は死生学、生活設計論、葬送関連。大学、自治体などで「終活」に関する講義や講演多数。11年に夫を突然死で亡くしており、立教セカンドステージ大学で配偶者に先立たれた受講生と「没イチ会」を結成。著書に『お墓どうしたら?事典』(つちや書店)、『〈ひとり死〉時代のお葬式とお墓 』(岩波新書)、『没イチ パートナーを亡くしてからの生き方』(新潮社)など多数。
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メモリーズ株式会社
代表取締役
ラガーマンであり、サックスプレーヤーという異色の経歴を持つ。祖母が入浴中に亡くなったことをきっかけに、遺品整理の必要性を感じ、遺品整理の専門業者・メモリーズを設立し現在に至る。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも紹介され、話題に。核家族や少子化が進むにつれて、需要は飛躍的に高まっている。「葬儀は肉体的な別れ、遺品整理は精神的な別れ」と考え、遺品を整理するだけでなく、悲しみに暮れる遺族の心も整理する。
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