株式投資はやっぱり「ギャンブル」ではない
勉強会と称して3人で最初に会った週末、正直に私は大輔さんに聞いてみた。
「株って怖い、ギャンブルだ! っていきなり母に反対されたんですが、どう思いますか?」
「アハハ。やっぱりそうかぁ。よくある話だよね。杏奈さんは株のことについて何か調べてみたの?」
少しは調べておいて良かったと思いながら、私は緊張気味に答えた。
「はい、インターネットで株式投資についていろいろ調べてみたけれど、会社が株式を発行するとか、儲かるとか、ピンとくる答えがなくて・・・。後は、英語で株のことを『share』とか『stock』とかいうところまでは見たのですが、ネットでよく見かけるのは取引の仕方のようなものばかりでした」
「なるほど。取引の手法にいかずに、そもそものところを調べたのが偉かったね」
いきなり褒められたので、何だか私は嬉しくなった。
「きたー。お兄ちゃん、そもそも論大好きだから」と智恵が笑う。
「じゃあ、最初にそれをはっきりしておこうか。株式投資はギャンブルじゃないよ」 私は大輔さんの目を見てうなずいた。
「ギャンブルは賭けとも言われるけど、参加した人たちの中で、負けた人のお金を勝った人が没収していく仕組みなんだ。一方、株式投資は、株式会社に出資をして、その会社が業績をしっかり出して評価されたら、投資した人みんながWinWinになれる仕組みなんだよね。もちろんタイミングが悪いと、いい結果を得られない投資家もいるけれど、会社の経営活動で価値が生み出されたことを共有できる仕組みだと僕は思っているんだ」
へぇ・・・。私はうっとりと聞いてしまった。
富を「共有・分配」するのが株式投資
「英語で『share』っていうのも投資家からみた共有とか分配という視点を表していると僕は理解しているよ」
「日本語で、株というのは?」私は、またしても野菜のかぶを思い浮かべながら聞いてみた。
「これは、植物の『株分け』から来ているらしい。智恵、うちの母ちゃんが庭で花の株分けしているの見たことない?」
「あっ そういえばお母さん、ランの花を育てていて、時々、ひとまとまりになっている根元を分けて、植え替えをしてたっけ・・・」
「それそれ。杏奈さんイメージ沸いてきた?」
大輔さんは、両手で花の根本をつかんで、割る仕草をした。
「はい、こんな感じですね」私も、株分けをイメージして両手で空気をつかんで割って笑った。
「ただ怖いギャンブルって見えるのは、株価の値動きだけを見ているからなんじゃないかな。やり方やかかわり方が全然違うことに気づいたら、大きくとらえて受け入れられるようになると思うよ」
ギャンブルと言った母を否定するのではなく、その視点にメスを入れる大輔さんの優しさに私はえらく感動した。