(※写真はイメージです/PIXTA)

環境や構造の変化によって為替にも影響が及びます。本記事では、ファンド運用における為替リスクについて「大きく負けない運用」を実践する本庄正人氏(キャピタル アセットマネジメント株式会社)が詳しく解説します。

国際収支における構造変化と為替への影響

このような環境、あるいは日本の国際収支が構造的な変化をきたした事実を目の前にして今年の7月には当時の神田財務官主導の懇談会答申として、「国際収支から見た日本経済の課題と処方箋」が発出されました。現状分析部分を筆者なりに要約してご紹介します。

 

国際収支の構造変化

(1)貿易・サービス収支 黒字基調から赤字基調へ

ここで言う「基調」とは長期的、構造的なものを意味しています。もはや日本には自動車に匹敵する黒字の担い手は存在しません。インバウンドで旅行収支は黒字であるもののデジタル関係の赤字が大きくトータルとして見たサービス収支は赤字となっています。

 

(2)第一次所得収支 黒字が増加中

海外事業を拡大し現地生産を増やす日本企業が増加しています。現地法人が生んだ収益は半分以上が、現地で再投資されるために日本国内には還流しないのが実情です。キャッシュフローの形で日本には渡ってこないため、為替レートの変動要因になりません。

 

一方で「国境の内側」での設備投資は過去25年間伸びていません。生産性の高い大企業ほど海外へ設備を移転してしまっているということです。

 

(3)金融収支

①対内直接投資

日本への海外からの直接投資は日本からの対外直接投資と比べるまでも無く、長年圧倒的に少ないのが事実です(対内直接投資残高の対GDP比では、OECD加盟国中最下位)。日本の市場が他国と比べて成長性、収益性の面で劣るほか、英語でビジネスを行える環境が整備されていないなどの欠点があるためであろうと言われています。

 

②証券投資

新NISAの影響もあり、家計から投資信託を通して海外証券投資が目覚ましく増加しました。これまで預金に偏重していた家計資産の分散投資が進んできたことの現れです。こうした資金が投資対象として日本企業にも向かうように日本企業の魅力を高める努力が必要です。

 

報告書では上記の構造変化への処方箋が複数示され、政策立案者への提言となっています。

 

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