11月の雇用統計発表…雇用増も、気になる長期失業者の増加
⽶労働省が公表した2024年11⽉の雇⽤統計によると、⾮農業部⾨雇⽤者数(事業所調査)は前⽉差+22.7万⼈と、市場予想(同+22.0万⼈)を上回りました(図表1)。
雇⽤の増加ペースは⽶南部を襲ったハリケーン「へリーン」「ミルトン」、ボーイング社のストライキなどの影響により⼤きく減速した10⽉から、11⽉に⼤きく加速した格好となりました。
加えて、過去2ヵ月分(9⽉、10⽉)が合計で+5.6万⼈上⽅修正されました。もっとも、ハリケーンの影響を勘案して10⽉、11⽉の平均でみると、+13.2万⼈増にとどまっており、雇⽤者数の伸びは鈍化傾向にあると考えられます。
11⽉の失業率(家計調査)は4.2%と、10⽉(4.1%)から⼩幅ながら上昇し、ハリケーンの影響がみられた7⽉とほぼ同⽔準となりました。11⽉はハリケーンの影響が剥落するなかでの失業率の悪化であり、⾒た⽬以上に悪い結果といえます。
失業率の変動要因をみると、「⻑期失業」した⼈が増加したことが失業率を押し上げたとみられます(図表2)。
今回の景気サイクルにおいて、⻑期失業者(27週以上の失業)は2023年3⽉の105万⼈を底に増加に転じ、2024年11⽉には166.1万⼈へ増加しています。
11⽉の平均時給は前⽉⽐+0.4%と、市場予想(同+0.3%)を上回りました(図表3)。
この結果、前年⽐では+4.0%(10⽉:同+4.0%)と⾼⽌まりが続いています。失業者の増加が続いているものの、賃⾦統計を⾒た限り、個⼈消費が急減速する可能性は⾼くなく、⽶経済は景気後退から距離があることを裏づける結果となりました。
もっとも、次期トランプ政権の下で移⺠の新規流⼊削減と⼀部国外退去が実現すれば、雇⽤者数の増加に下押し圧⼒がかかる可能性があります。
また、トランプ⽒が政府効率化(DOGE)を設⽴したことで、政府部⾨における雇⽤にも下押し圧⼒がかかることも想定されます。良好な所得環境が維持されていることから個⼈消費は当⾯崩れることはないと予想されるものの、雇⽤の先⾏きを占ううえで懸念すべき材料が浮上している点には留意が必要です。