(※写真はイメージです/PIXTA)

退職金を手にした65歳の夫婦が、長年の夢だった2拠点暮らしへ。出会った物件を即決購入するも、予想外の維持費など困難な状況に直面し、老後の資金が急速に目減りしていきます。夢を追いかけたはずが、なぜ老後破産の危機に陥ったのでしょうか。本記事では、坂田さん(仮名)夫妻の事例とともに、セカンドハウス購入の落とし穴と、老後の資金計画の重要性について、合同会社エミタメの代表を務めるFPの三原由紀氏が解説します。

予想外の出費と利用制限が老後資金を蝕む

しかし、暮らし始めてみたらさまざまな問題が浮上します。というか、勢い余って購入に突き進んでしまったので、購入前はあまり気にしていなかったことが明らかになってきました。

 

たとえば、冬期の利用制限です。正確には、住戸利用への制限はありませんが、10月ごろから水まわりの設備凍結による被害防止のために水抜き作業が必要になることです。実際に滞在してみると、冬の寒さは都会の自宅マンションと比べものになりません。

 

どうやら、高原というだけあって、夏の避暑地としては素晴らしいものの、冬場で過ごすには適しているとはいえません。特に、高血圧の慢性疾患がある博さんにとっては、高リスクな環境です。当初、1ヵ月ほど暮らしてみたら、光熱費が5万円以上かかってしまいました。

 

冬場に暮らすとしたら、本格的な断熱リフォームが必要だとわかり、500万円ほどの出費に。また、10年ごとに大規模修繕があり、持分割合により臨時負担金があることもわかります。昨年行われたときは450万円で、9年後の費用は未定です。

 

仮に、快適なリゾート暮らしを望み、20年間保有するとしたら、リフォームと大規模修繕に1,400万円、管理費などの維持費で最低1,200万円。滞在コストとして光熱費や食費、自宅からの交通費など年間50万円とすると、退職金の5,000万円は底をつきます。

 

つまり、坂田さんの老齢資金はすっからかんになり、医療や介護を含めて生涯年金だけでやりくりしなければなりません。購入して1年ですでに2,000万円がなくなり、当初の計画では、年金と退職金で十分と考えていましたが、予想外の出費が重なり、老後破産の危機に直面することになったのです。

 

「ああ、せっかく手に入れたセカンドハウスがこんなに金食い虫だったとは……」嫁にいった一人娘にもこんな状況を話せるはずもなく……。落胆する坂田さん夫婦でした。

 

老後の夢を実現するには、慎重な計画と柔軟な対応がカギとなります。坂田夫妻のケースから学べる教訓をみていきます。

 

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