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いったいどうしたら…「突然のお達し」で生活破綻一直線
吉岡正太郎さん（仮名・55歳）は小さな商社に勤める会社員。大学を卒業してから同じ会社で働き続ける生え抜き社員です。
もちろんこれまで転職を考えたことがないわけではありません。しかし、この会社のいいところは今でも年功序列の名残があること。全員ではありませんが、よほど大ポカをしなければ、勤続年数や年齢に応じて役職や収入が上がっていきます。
吉岡さんも特に優秀というわけではなかったものの、転職していく同期を見送り続けた結果、残った自分が部長職に昇進した形です。年収は850万円で、会社の規模や仕事の内容を考えれば十分な金額。年を重ねるほどに「いい会社に就職した」と感じていたのでした。
しかし、そんなある日、事態は大きく変わります。一代で会社を築き上げた70代の社長が病死し、外部から新しい社長が就任したのです。しばらくして社員一度が呼び出され、新社長からの経営方針が発表に。そして、その際に「役職定年制導入」が告知されたのでした。
その内容とは、この2年で赤字経営に転落しており、組織の活性化やイノベーションが必要であること。そのため55歳以上の役職者は役職定年とし、一般社員として業務にあたること。同時に役職手当の支給もなくなり、賞与や退職金についても、役職手当なしの給与を基に計算しなおされるといったことでした。
吉岡さんの顔は真っ青になりました。これからも収入は上がり続けることや退職済みの先輩から聞いた退職金の額などを織り込んで、高級マンションを頭金もほとんど入れずにローンで購入し、娘は学費の高い私立中学校へ通わせていたのです。
生活水準も高く散財してきた結果、手元の貯金は300万円程度。それでも「これからもらうお金でなんとでもなる」と考えていました。老後ももちろん悠々自適に過ごせると確信していました。
突然はしごを外され、吉岡さんは一気に窮地に。年収は3割強減の580万円になり、しかも、業務評価が悪ければ、今後さらなる給与見直しが容赦なく断行されるとのことでした。
吉岡さんはぬるま湯の会社員生活で、ここ数年面倒なことはすべて部下に投げてきました。そのため、今さら一般社員として仕事をしろと言われても、あれもこれもできない……となるのは明白でした。役職定年によって、いっきに「お荷物社員」になることが決定したのです。
思い余った吉岡さんは、新社長に役職定年制度について撤回の余地はないのか、個人的に尋ねました。
「わたしは30年以上この会社のために必死に働いてきました。それなのに急にこんなことをされては……あまりに残酷ではないですか？」
しかし答えはこうでした。
「必死に？ 本当にそうでしょうか。社内の話を聞いたところによれば、あなたの評価はあまりよろしくないようです。もし不満であれば、他社に移ることも自由ですよ」
そう言われても、そんなスキルはもちろん吉岡さんにはなく……。悲壮感を漂わせながら肩を落とすしかなかったのでした。
「いつまででも働ける時代」と言えば確かにそうかもしれませんが、とはいえ会社も自分もずっと同じではいられません。どんなことがあっても生きていけるように、健康を保ちスキルを磨き続けることが必要なのかもしれません。
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