●時事通信社は、市場の12月利上げ観測に対する日銀内の困惑と利上げに慎重な様子を報じた。
●報道後、市場が織り込む12月の利上げ確率は低下も、日銀中村審議委員の発言で再び上昇。
●市場は日銀関連報道に敏感な状態、弊社は来年1月以降当面半年毎25bpの利上げを予想。
時事通信社は、市場の12月利上げ観測に対する日銀内の困惑と利上げに慎重な様子を報じた
時事通信社は12月3日と4日、日銀の金融政策に関する記事を連日配信し、市場で話題になりました。ちょうど、日本経済新聞社が11月30日、植田和男日銀総裁のインタビューでの発言を電子版で報じ(インタビューは11月28日に実施)、今週は週初から12月の利上げ観測が高まる流れとなりましたが、時事通信社の記事は、そのような観測に対する日銀の反応を伝えています。
3日の記事では、植田総裁のインタビューでの発言は、米国経済の先行きを見極めたい旨のコメントなどを踏まえると、市場の12月利上げ論を少し落ち着かせる狙いがあったと分析しています。また、4日の記事は、インタビュー後に市場で12月の利上げ観測が高まったことに対し、日銀内では困惑の雰囲気があり、円安進行などで物価が大きく上振れるリスクが低ければ、拙速な利上げは避けるべきとの見方が広がっていることを伝えています。
報道後、市場が織り込む12月の利上げ確率は低下も、日銀中村審議委員の発言で再び上昇
一般に、日銀が明確に利上げ時期を決めていない状態で、市場が早々に12月の利上げを織り込んでしまうと、利上げ見送りとなった場合、大幅な円安など市場が大きく変動する恐れがあります。そのため、これはあくまで推測に過ぎませんが、日銀は時事通信社との取材において、12月の利上げについて、市場があまり先走らないよう、ある程度牽制する意図があったように思われます。
時事通信社の報道後、市場が織り込む12月の利上げ確率は低下しました(図表1)。その後、日銀の中村豊明審議委員は12月5日、広島市内で行われた金融経済懇談会後の記者会見で、「利上げに反対しているわけではない」、「(利上げに慎重な)『ハト派』といわれているようだが、決してそういうつもりはない」と発言しました。これを受け、小幅ながら12月の利上げ確率が上昇する動きが確認されました。
市場は日銀関連報道に敏感な状態、弊社は来年1月以降当面半年毎25bpの利上げを予想
日銀の金融政策決定会合が近づいており(12月18日、19日開催)、市場は政策判断の手掛かりを探るべく、関連の報道に敏感になっていますが、今週の市場の動きを見る限り、日銀にはもう少しわかりやすいコミュニケーションが望まれます。なお、日銀は経済・物価が見通しに沿って推移していけば、金融緩和の度合いを調整するとしていますが、日銀と弊社の経済・物価見通しは図表2の通りです(日銀は10月31日時点、弊社は11月18日時点)。
弊社は日本経済について、この先は成長軌道をたどり、消費者物価指数(除く生鮮食品)の伸びは、振れを伴いながら減速するものの、前年同月比で2%程度のペースを維持すると予想しています。政策金利は、2025年1月、7月、2026年1月と、半年毎に25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げを見込んでおり、その後は1年程度の時間を置き、2027年1月に25bpの利上げを想定しています。
(2024年12月6日)
※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日銀、市場の「12月利上げ観測」にやや困惑の様子【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト