無法地帯と化したタワマンの一室
はじめのころこそ遠慮していた里美さん夫婦でしたが、次第に慣れ始めてきたせいか好き勝手を始め、美智子さんはその生活態度が段々気になるようになってきました。また、持ち込んだ段ボールの山は、里見さんたちの部屋だけでは収まらず、リビングにも積み上がり、いつまでも片付けようとする気配はありません。
また、義両親は足が不自由で、常に誰かが家にいなければ不安な状態です。お構いなしに出掛ける里見さん夫婦の代わりに美智子さんが気にしなければならないことが増え、負担となってしまっていたのでした。
「いつ出ていってくれるの?」と夫に尋ねるも、「そんなに俺の家族を追い出したいのか!?」と怒り始めるため、会話になりません。直接義妹夫婦と話をするも、老後の資金計画をまるで考えておらず、資産もほとんどないためにのらりくらりと話題を逸らし、しっかり話し合いもできません。
そんな関係性が半年ほど続き、ついに美智子さんと一郎さんの夫婦関係にも亀裂をもたらし、離婚問題に発展してしまったのでした。
夫婦双方がひかず、収拾がつかない問題に
両親が資産家でタワマンも美智子さんの名義でしたので、弁護士を介して夫と義理の家族に対してタワーマンションから出ていくことを要求し、受け入れてもらうことができました。
しかし、離婚に反対する夫はなかなか離婚に同意してくれず、認める条件としては美智子さんの資産の半分の財産を要求。これまで堅実に貯めてきた資金を持つ美智子さんにとっては、一郎さんがいなくても経済的には特段の問題はありません。反対に一郎さんにとっては、住居を失うだけでなく、資産のない妹夫婦と両親を抱えての別居ですので、自分の資産の2,000万円程度ではこれからの生活に不安が残ります。そのため、美智子さんが資産を築くことができたのは自分の収入があってこそと、財産分与を申し出てきたのでした。
一方で、美智子さんからすれば、若いころから仕事の傍ら家事、育児をこなしてきたのは自分です。さらに、美智子さんの両親から譲ってもらったタワマンがあったからこそ夫もこれまで資産を築くことができたと、考えていますので、自分の資産を渡すなど到底できません。
それから1年半が経過し、結局は夫側が折れる形で解決したのでした。ストレスから解放されて平和な生活を取り戻すことができた美智子さんでしたが、本当は夫婦2人で生活していきたいと考えていただけに、1人で過ごすタワマンの一室は、余計に広く感じています。