年金月15万円、後悔を残して亡くなった母の遺産3,500万円…遺言書に記された「年子・自由人弟」の“まさかの取り分”に「62歳・真面目な無職の長男」怒りの剣幕【FPが解説】

年金月15万円、後悔を残して亡くなった母の遺産3,500万円…遺言書に記された「年子・自由人弟」の“まさかの取り分”に「62歳・真面目な無職の長男」怒りの剣幕【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

親の介護と相続、そしてきょうだいの確執。このケースは、現代社会で多く見られる家族間の問題を象徴しています。Aさんの事例とともに、きょうだい間の相続トラブルについて、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

従順な兄、自由な弟

現在62歳のAさんには1歳年下の弟がいます。弟とは5年前に父が亡くなった際、遺産相続でもめて、疎遠になってしまいました。

 

父の相続時にもめた原因は、父が生前、長男であるAさんを優遇していたことです。Aさんの父は時代劇に出てくるような考えの人でした。自身がそうだったように、長男が家を継ぐという家督を重んじていたことから、Aさんは父の知り合いの上場企業に入り、優遇されていました。Aさんは、家を継ぐという使命に特段反抗することもなく、父の敷いたレールに乗って過ごしていました。一方、弟は自由に過ごしていたものの、大学受験では希望する大学に入れず、就職でもなかなか内定がとれず、苦労した経緯がありました。

 

父の遺産相続では、遺言書がなかったため、母に家と現金1,000万円を、子どもには均等に500万円をわけることになりました。しかし弟は納得できず「兄貴ばかり優遇されてきたのだから均等では不公平だろう」と責め立てたのです。Aさんも弟の言い分には納得できなかったため、父の死を機に2人の兄弟は疎遠になりました。

 

これまでの母は、父の意向を尊重し従ってきました。しかし、父が亡くなったあとは、「時代も変わったのだから、時代に沿った考え方が必要なのかもしれない」と価値観が偏っていた父に合わせるような考えを改め、こまめに連絡をとり、家を訪問するなど、より一層弟を気に掛けるようになりました。

 

母は「いままで弟に寂しい思いをさせてしまった」と後悔しているようでした。ただ、家を継ぐといわれてきたため、親の老後の生活から介護まで、すべてAさんが面倒をみてきたのです。

母が余命宣告される

母の年金収入は、少ない老齢基礎年金(35万円)と父の遺族年金(145万円)でした。父が長年会社勤めをしていたため、母の日常生活は年金のみ(月額換算15万円)でなんとか賄うことができました。ところが、母に癌がみつかります。悪性でステージ4。余命宣告をされました。

 

Aさんは、頑固な父を一番近くで支え、苦労してきた母をみてきたので、最後まで好きなことをさせてあげようと、旅行へ連れていったり、母の大好物のカニを食べにいったりとできる限りの親孝行をしました。また、治療費等はすべてAさんが負担していました。

 

母は父が亡くなった際、兄弟仲が悪くなったことを教訓に公正証書遺言を作成していました。このときAさんは、母のことだから均等にわけるように作成しているだろうと深く考えてはいませんでした。

 

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