遺留分侵害額請求の方法は?
遺留分侵害額請求はいつでもできるわけではありません。相続の開始と遺留分の侵害があったことを知ったときから1年以内にしなければ時効にかかってしまいます。また、相続が開始してから10年経った場合にも遺留分侵害額請求をすることができなくなってしまうので要注意です。
今日子さんが遺留分を確保するためには、遺言書を発見した時点で遺留分が侵害されていることをご認識されているので、この時点から1年以内に弟さんに対して遺留分侵害額請求の意思表示を行う必要があります。
注意すべき点は、意思表示の方法です。意思表示を行う際には、口頭ですと証拠に残らず、あとで揉める可能性があるので、配達証明付きの内容証明郵便で意思表示をしましょう。そのあと、今日子さんは弟さんと遺留分侵害額や支払方法を話し合うことになります。
もっとも、話し合いをしたあとにはその内容を書面に反映する必要があることから、自身に有利な交渉を進める上では、専門家である弁護士にご相談することをおすすめいたします。
なお、話し合いで遺留分侵害額や支払方法が決まらない場合には、家庭裁判所で調停を申し立てることが法律に規定されております(調停前置主義)ので、家庭裁判所の調停で話し合うことになります。
調停でも遺留分侵害額や支払方法が決まらない場合には、地方裁判所に訴訟を提起して、和解ができなければ、最終的に判決で遺留分侵害額が決まります。
介護の貢献に対する評価(寄与分の主張)
今日子さんとしては、10年間お母様の介護を続けてこられたことを寄与分として、弟さんに対する遺留分侵害額請求の際、請求する金銭の上乗せにならないかと思われるかもしれません。寄与分の主張につながる可能性があります。
寄与分とは、相続人が被相続人の生活や財産維持に貢献した場合、その貢献度に応じて法定相続分以上の取り分を得られる仕組みです。具体的には、介護の期間や労力、費用などを証明することで、寄与分を主張します。
しかし、遺留分侵害額請求については、遺留分の算定の基礎となる財産のなかにこの寄与分を加えることができません。残念ながら今日子さんが請求する遺留分侵害額のなかに寄与分を加味することはできないのです。
最後に今日子さんのように長年介護をしてきたにもかかわらず、不公平な遺言書が作成されていたため、いたたまれないお気持ちになられる方は非常に多いです。今日子さんのような悔しい思いをしないためにも、被相続人の生前に相続人が公平な相続ができるような遺言書を作成してもらうことが重要です。
また、仮に被相続人による遺言書の作成が難しかったとしても、将来遺留分侵害額請求をする権利は確保されています。遺留分侵害額請求をする際の財産の存在やその評価を立証するのは、遺留分を侵害された方ですので、介護の一環として財産状況を少しずつ把握することも重要です。
なにより、親族同士が争う相続を避け、円満な相続を実現するためにも準備は不可欠です。相続の手続は複雑であるため、相続が発生する前から弁護士に一度相談することをおすすめいたします。
板橋 晃平
弁護士