「介護をしてきたのは私なのに…」
富山県に住む今日子さん(58歳)は、10年のあいだ、認知がしっかりしているものの、身体の調子がよくないお母様の介護をしてきました。大学進学で東京の大学を卒業し、しばらくは東京で働いていた今日子さんですが、母の体調が悪くなったことを機に地元に戻り、地元の企業に再就職。幸い今日子さんにはキャリアがあったのと「真面目で優秀な今日子ちゃんなら」と親戚が世話をしてくれたこともあり、思ったより再就職はすんなり決まりました。そして仕事をする傍ら、「できる範囲で頑張ろう」と母親の世話を続けてきました。
ときには疲れたり、誰にも相談できずに悩んだりすることも多かったようです。弟夫婦も近所にいるのですが、共働きで「まだ稼がなきゃ!」と忙しそうにして、介護の手伝いはほとんどしてくれませんでした。
そんななか、母親が亡くなり、遺品整理をしていたところ、母親のタンスから遺言書を見つけました。筆跡は母親のもので、10年前に作成されたものでしたが、そこに書かれていた内容を見て今日子さんはショックを受けます。
母親が残した預貯金3,000万円のうち1,000万円は今日子さんに、残りの2,000万円、自宅とその敷地(合わせて5,000万円ほどの価値)は弟に相続させると書かれていたのです。
遺言書の検認という裁判所での手続きをした際に、相続人である弟も出席していたので、今後の相続について話し合いを求めたのですが、遺言書のとおりに相続したいといわれ、それ以降話し合いができていない状態です。
今日子さんは、「弟と協力してやってきたわけでもないし、せめて平等に分けてもらいたい……」とやりきれない気持ちになりました。
「母親は昔から『弟は長男だから』と弟ばかりを優遇してきました。完全な長男教です。私が大学進学で上京したのも閉鎖的な地方から出たかったから。地元を出るなら国公立の大学しかダメと言われて。浪人もダメだったので必死に勉強しました。弟は私立でもどこでも受けていいよと言われて、一浪の末、地方の私立大学に進学しました。(弟が卒業した)大学名は忘れました」と絞り出すように話し始めた今日子さん。
そして「遺言書は元気だったときに母が書いたものなので、遺言書の内容を変更することは難しいと思うのですが、あまりにも不公平だと思います。弟に対して主張できるような法律上の権利があるなら教えてもらいたいです。大ごとにしたいわけではないですが、どうしたらいいでしょうか?」と相談を寄せられました。