ナシゴレンはもう飽きた!資産家の父から3億円を相続した55歳元サラリーマンの悲鳴…税金対策のため「海外移住」も、“わずか2年で帰国”のワケ【税理士の助言】

ナシゴレンはもう飽きた!資産家の父から3億円を相続した55歳元サラリーマンの悲鳴…税金対策のため「海外移住」も、“わずか2年で帰国”のワケ【税理士の助言】
(※写真はイメージです/PIXTA)

日本の高額な相続税から逃れるために「海外移住」を検討する人も少なくありません。しかし、多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士によると、課税対象から外れる期間まで耐えられずに帰国してしまう人が後を絶たないそうです。お金があって快適な生活を送れるはずが、いったいなぜなのでしょうか。父の莫大な遺産を手にした男性のケースをみていきます。

マレーシア最高!憧れの海外生活を満喫するAさんだったが…

マレーシアへの移住を実現したAさん。移住当初は毎日が刺激的で「マレーシア最高! 税理士さんに感謝だな」と、新天地でのセカンドライフを満喫していたそうです。

 

しかし、浮かれていた気分が落ち着くにつれて、移住当時は気にならなかったことでストレスを感じるようになりました。

 

まずAさんを悩ませたのは、娯楽が少ないこと。ゴルフやカジノ、観光地はありましたが、行く場所が限られており、数ヵ月で飽きてしまいました。

 

また、マレーシアには季節感がありません。ほぼ1年中同じ気温であるため、日本のように春夏秋冬で景色が異なるということがないのです。乾季と雨季はありますが、ほぼ1年を通して同じ気候で、変わり映えしない生活を送っていました。

 

さらに誤算だったのは、物価が思っていたほど安くないことでした。

 

現地の生活水準に合わせれば安いのは間違いありませんが、日本食やお酒を求めるとそうはいきません。マレーシアの物価は日本の3分の1といわれていますが、日本と同じ水準の生活をしようとすると、生活費はむしろ高くなるのです。

 

また、交通機関が不便なこともストレスを感じる原因でした。首都のクアラルンプールなら車なしで生活できますが、定時に電車は来ません。乗り継ぎも不便で、他の都市では車がないと生活が困難でした。

 

当初は楽しめていた海外生活ならではの“刺激”に、だんだんと不満が募っていくAさん。次第に「日本での生活の良さ」に気づき、1年を過ぎたあたりから日本帰国を検討しはじめることとなりました。

海外移住が続かないワケ

相続税対策として海外に移住したものの、日本が恋しくなって帰国するケースは少なくありません。Aさんのような理由に加え、次のような理由でも移住を断念することがあります。

 

■親族や友人と一緒にいられなくなる

海外に家族で移住した場合、今までの親族や友人とは気軽に会えなくなります。現在はSNSやzoomなどオンラインで通じ合うこともできますが、実際に会えるほうが楽しいと感じる人のほうが圧倒的に多いです。現地で信頼できる友人などができない場合、寂しい毎日を送ることになりかねません。

 

■語学学習が必須

永住権を得るためには、その国の言語を習得することが必要な場合があります。ビザや生活に必須ではない場合でも、移住先の言葉は覚えたほうがよいでしょう。話せないと、そもそも現地の人とコミュニケ-ションがとれず、ストレスを感じることとなります。

 

■医療や政治に対しての不安

若い間は問題なく過ごせても、年齢を重ねると体のどこかが調子が悪くなるものです。このまま年をとってもちゃんと暮らせるのだろうか? 大きな病気をしたらどうなるのだろうか? などと考え始める人が多くなります。また、もしも病院のお世話になる場合、日本では考えられない「高額な医療費」が必要になる場合も。そのほか、移住先の政治情勢が不安定な場合もあるため、移住の際には考慮に入れる必要があります。

 

上記のような理由から、相続税のためとはいえ、海外の生活環境になじめず早々に帰国してしまうケースがあとを絶ちません。

 

そもそも十分すぎるほどのお金を持っており、「もったいない」という気持ちはあれど、不便さやストレスに対してそこまで我慢をする必要がないと気づいたAさんは、「わがままで本当に申し訳ない。でも……ナシゴレンはもう飽きた! 日本の快適さが恋しいんだ! 帰ろう」と、ついてきてくれた妻に謝罪。移住して約2年で日本への帰国を決断したのでした。

 

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