(※写真はイメージです/PIXTA)

年金は多くの人にとって老後の収入の柱です。しかし、夫婦での合計受給額をベースに老後のマネープランを立てていると、配偶者の一方が先に亡くなった際、遺された側は危機に陥ることも。本記事では、田村さん(仮名)の事例とともに、日本の遺族年金制度と老後の住まいの問題について、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナーである波多勇気氏が解説します。

姉さん女房が先に亡くなり、一人遺された夫

田村浩二さん(仮名/60代)は、会社員として40年間働き、定年を迎えました。妻の美智子さん(仮名/70代)は専業主婦でしたが、過去に働いていた時期があり厚生年金も受給しています。夫婦の年金収入は合わせて月30万円。生活費は月25万円程度で、少し余裕がある老後生活でした。

 

「息子夫婦が孫の顔を見せに来てくれるのがなによりの楽しみだった」と浩二さんは当時を振り返ります。老後資金として1,000万円の貯蓄もあり、2人とも将来の生活に不安はありませんでした。

 

しかし、浩二さんの定年から間もなく、美智子さんが心臓発作で他界。「こんなに早く別れがくるとは」日に日に寂しさは増すばかりです。そこへ、さらなる悲劇が……。

 

遺族年金0円の衝撃

妻の死後、浩二さんが受け取れる年金額は自身の年金20万円程度のみ。夫婦お互いの万一のときには遺族年金がもらえるものとばかり思っていましたが、浩二さんの場合、自身の厚生年金分が控除されてしまうことをこのとき初めて知りました。

 

「いままでの生活費に足りないどころか、家賃や光熱費を払ったらほとんど残らない」と、浩二さんは絶望的な表情を浮かべます。生前の美智子さんは、頑なな賃貸主義でした。持ち家だった実家でのご近所トラブルが原因で、ひとつの場所に住みつづけることを拒んだのです。浩二さんは持ち家に特段のこだわりもなかったため、妻の意見に同意し、2人は賃貸暮らしを選択しました。

 

なんとか固定費を減らそうと、条件に合ういまよりも家賃の安い賃貸に申し込むも、審査落ち。やむなく現状維持となり、浩二さんの物件探しの日々は続きます。日々の赤字を補填するため、貯金を切り崩して生活することになりました。

 

妻が亡くなったからといって、ここまで金銭的に逼迫するとは思いもよらなかったでしょう。これまでは、困ったことがあっても世話焼きで責任感の強い妻と一緒であれば、なんでも乗り越えることができていました。しかし、頼れる妻ももういません。金銭的な不安と孤独感で浩二さんは段々とふさぎこみがちになりました。

 

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※プライバシーのため、実際の事例内容を一部改変しています。

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