(※写真はイメージです/PIXTA)

年金は多くの人にとって老後の収入の柱です。しかし、夫婦での合計受給額をベースに老後のマネープランを立てていると、配偶者の一方が先に亡くなった際、遺された側は危機に陥ることも。本記事では、田村さん(仮名)の事例とともに、日本の遺族年金制度と老後の住まいの問題について、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナーである波多勇気氏が解説します。

日本の遺族年金制度

遺族年金は、夫婦のどちらかが亡くなった場合に一定額を受け取れる制度です。しかし、田村家のようなケースでは、想像以上に受給額が少ないことが問題になります。厚生年金における遺族年金は、亡くなった人の年金額の最大4分の3が支給されますが、自身の老齢厚生年金分が控除されてしまいます。今回のケースでは遺族年金よりも浩二さんの老齢厚生年金のほうが多かったため、単純に妻の年金収入分が減少することとなりました。

 

二人暮らしが一人暮らしになったからといって、生活費も単純に半分になるというわけではありません。月の収入が10万円いきなり減ることは大きな痛手でしょう。これは、浩二さんだけに限った話ではありません。

 

高齢期に待ち受ける賃貸派のリスク

厚生労働省の調査では、夫婦世帯の平均年金収入が月22万円程度。一方で、単身世帯になると平均14万円程度に下がります。このギャップは住宅ローンが終わった自宅持ち世帯には比較的緩和されますが、賃貸暮らしの場合は家賃が負担となり、生活が成り立たなくなる場合もあります。

 

単身の高齢者は、若者と比べ、物件内での孤独死のリスクが高いとみなされやすいことから、入居審査で落ちる可能性が高まります。万が一室内で孤独死が発生してしまうと、新たな入居者を見つけるまでに経済的・時間的コストが発生するため、慎重になる貸主が少なからずいるためです。

 

また、年金という安定した収入があるものの、健康状態が悪化すれば、医療費や介護費などの負担もかさむことから、働いて収入を増やすことが若者より難しい高齢者を、経済的に不安視する貸主もいるようです。

 

医療費や介護費が増加する高齢期には、思わぬ出費が家計を圧迫します。実際、田村さんも美智子さんの医療費を補うために貯蓄の一部を使っていました。もともと1,000万円あった貯蓄は美智子さんが亡くなることにはすでに少なくなっていました。「遺族年金の制度はあるけど、生活費のすべてをカバーできるわけではない」という現実が、計画の甘さを浮き彫りにしました。

 

息子夫婦に同居を申し出

いよいよ貯蓄が底を尽きかけます。もうあそこしかない、と浩二さんは息子夫婦に同居を申し出ました。事情を話すと息子が快諾してくれたため、引っ越しをすることになりました。

 

しかし、引っ越しから数日経ったある深夜、トイレに立った浩二さんは居間で口論する声を耳にします。

 

「お義父さんに出て行ってと言ってよ。日中も家に居られて私は休む間もないの。それに2人目がほしいって言ったじゃない。お義父さんが部屋を一つ占拠してちゃどうにもならないわ」

 

「仕方ないだろ。それに行く当てがないのに放り出せないよ」

 

「私いやよ、この先、お義父さんがもし介護になってお世話するのなんて」

 

「お前、そういういい方はないだろう!」

 

どうやら自分のせいで息子夫婦が喧嘩になっているようです。これはまずい……。浩二さんは焦りました。「息子たちが最悪、離婚にまでなってしまったら」精神的に不安定な状態の浩二さんは悪いほうへ悪いほうへと考えてしまいます。その日からまた賃貸探しを始めました。しかしいまのところ、浩二さんの住まい問題は解決していないようです。

 

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