イーロン・マスクの予算削減案が“妄言”とは言い切れないワケ
無視できないのは、マスク氏に実績(前科)があることである。2022年にツイッターを買収し、従業員を8割も削減するという大ナタをふるった。それは、労働強化ではなく業務の効率化と新技術の活用によって実現した。このことからも、マスク氏は「同様のことは、行政機構においても可能である」と考えているのであろう。
確かにAIの進歩は驚異的であり、我々が最新の技術を装備すれば、信じがたい効率化が可能になる。ではなぜそうしないのか……効率化を阻んでいるのは、旧来の既得権益と慣習である。既得権益には、人権、マイノリティ保護など、“リベラルの衣”を着ている主体も含まれている。DEI(多様性・均等性・包摂性)という口実そのものも、経済発展の阻害要因になっているという認識である。
今や日進月歩の技術進歩を実装し効率を上げる競争は、企業間のみならず、国家間の雌雄を決する要素である。そうしたリストラは、コスト削減以上に業務の効率化とスピードアップをもたらし、競争力を決める決定的要素となる。
現状においてすら、最も規制が少なく、労働と資本が流動的で最もイノベティブな米国が、一段と効率化するなら、それは競争相手にとって恐るべきことである。トランプ氏とマスク氏がこれほどまでに規制緩和と既得権益の打破にこだわるのには、十分な技術的・経済的正当性がある、と言ってよいであろう。
トランプ氏、マスク氏が共有する“開拓者精神”は過去何度も米国経済の舵をきってきた
トランプ氏、マスク氏が共有する徹底した反権威主義、自立自尊の開拓者精神は米国の歴史上度々登場し、経済社会の舵をきってきた、と言われている。
1820年代のA・ジャクソン大統領、1980年のR・レーガン大統領などはその代表例であろう。彼らはリアリストであり、力の信奉者でもあった。トランプ氏、マスク氏が共有するスローガン「多数意見は、勇気ある一人が創る」はジャクソン大統領の名言でもある。
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