トランプ・マスク両氏に共通する思想「リバタリアニズム」とは
日経新聞コメンテイターの中山淳史氏は、トランプ氏とマスク氏が、徹底して規制を嫌うリバタリアニズム、の主唱者、アイン・ランドの思想に共感していると指摘する。
「アイン・ランドは激動期の旧ソ連からの亡命者で、『一握りの才能ある人間が世界を支え、人々に繁栄と幸福をもたらす』という世界を描いて『規制と凡庸な人々こそが才ある人間を殺す』とのメッセージを込めた。
米国では連邦準備理事会(FRB)議長だったグリーンスパン氏をはじめ、世界観を支持する経済人が意外に多いといわれている。小説の底流に流れる思想は規制を徹底的に嫌うリバタリアニズムという考え方だ」(日経新聞11.14.24)
2024年ノーベル経済学賞は、歴史と制度分析を経済学の領域に取り込んだことにより、ダロン・アセモグルMIT教授等3名が受賞した。
アセモグル教授は、
「私的財産保護、機会平等、自由な市場経済など、政治経済の仕組みを持つ国こそがイノベーションを生み、繁栄を実現できる。権威主義的な政治制度は創造的破壊の芽を摘むため、長期的な成長には結びつかない。
法の支配が貧弱な社会、国民を搾取する制度は支配者に特権を与え、人々を隷属させ続ける。一見改革に見える変化が起きたとしても、支配者が入れ替わるだけで停滞が続く」
と主張している。そのためにこそ、機会均等を維持する規制緩和と既得権排除が必須であるという意見である。
氏の所説に従えば、米国固有のDNAとたゆまぬ改革により米国資本主義というエコシステムが進化してきたのである。規制緩和を進め、既得権益化を排除するというトランプ氏やマスク氏の主張は、米国の資本主義の源流に根差している、とも言える。
このように見てくると、「MAGA、アメリカを再び偉大にする」、「米国の黄金時代が到来する」という展望は現実味を帯びてくる。
株式市場の状況は「30年前」に類似している
株式市場に目を転ずると、現在は1995年に多くの点で類似している。1995年は1996年12月の根拠なき熱狂(グリーンスパン議長)を経て、2000年のITバブルに向かう上昇相場の起点であった。
類似点とは、
①利上げ終了後に高い実質金利が維持されたこと
②長期金利も抑制されイールドカーブフラット化が長期化したこと
③ドル高が続いたこと
④技術革新(当時はインターネット革命、今はAI革命)の進行が旺盛な投資をけん引したこと
などである。2025年米国株式のアップサイドポテンシャルに留意したい。
武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表
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