ナースコールシステムの運用改善による看護師と患者へのメリット
ナースコールシステムは、冒頭のとおり「入力デバイス」「制御部分」「出力デバイス」の3つの要素で成り立っています。ここでは特に入力デバイスと制御部分の進化を紹介します。
入力デバイスの進化
まずは、入力デバイス。従来、ナースコールは患者が押すボタンが主流でしたが、最近では身体が不自由な患者も使いやすいデバイスが増えました。たとえば、ある大手メーカーが提供する製品では、手を動かせない患者のために足で踏むボタン(タッチコール機能)や、息を吹きかけてコールする装置(ブレスコール機能)が開発されています。こうした機能を使えば、どのような患者でも自身の状態に応じて簡単にナースコールを発信できます。
また、センサーデバイスの導入も進化を遂げています。たとえば点滴が終了したことを知らせるセンサーや、最近ではトイレに行きたくなった患者に反応する「膀胱センサー」も。膀胱センサーは患者のお腹に取り付けられ、膀胱が満杯になると自動的にナースコールが発信される仕組みです。エコー検査の技術を応用しており、患者が手を使わなくても、必要なときに適切に呼び出せるようになっています。
さらに、これらのセンサーデバイスからのコールは、従来のボタンによる呼び出しと同じようにシステム内で処理されます。また、「ボタンからのコール」なのか「センサーからのコール」なのかを判別する機能も備わっており、看護師はすぐに対応の方法を判断できます。こうした技術の進化により、患者のニーズに柔軟に応じられるようになり、医療現場でのケアの質も向上しています。
また、医療現場ではIoT(モノのインターネット)の活用が進んでいます。IoTは、あらゆるセンサーがネットワークに接続され、データがリアルタイムで収集・分析される技術を指します。
たとえば、点滴の終了を知らせるセンサーは、医療現場で導入が進んでいます。一方で、ベッド周辺の温度、湿度、明るさ、ガス圧などを測定するセンサーについては、技術的には可能であるものの、現時点では導入例はありません。しかし、これらのデータを活用することで、患者の療養環境をよりよくし、適切なケアを提供する取り組みが期待されています。また、 患者のベッドにタグを取り付け、患者がベッドから離れた際にアラームを発するシステムがあるほか、寝返りを検知するセンサーも導入されつつあり、寝返りを打っていない場合に警告を出し、褥瘡(床ずれ)のリスクを軽減することが可能です。
このようなセンサー技術の進展は、患者の安全性を大きく向上させる可能性があります。たとえば、センサーが常にデータを収集し、そのデータに基づいて適切な対応を取ることで、不必要なアラームの発生を抑えつつ、重要な情報を医療従事者に迅速に提供できるのです。現場の看護師は過剰なアラームに煩わされることなく、必要なケアに集中できる環境が整います。
■患者の動作なしでナースコールが使える未来
ナースコールの入力デバイスに関連して、さらに未来の話をしましょう。患者が自分で動作しなくても、ナースコールが発信できる技術が登場しつつあるのです。たとえば、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の場合、身体をまったく動かせなくなっていきます。こうした患者がナースコールを発信するためにはどうすればよいでしょうか。
1つの方法として、脳波を用いる技術があります。脳波を拾って「はい」「いいえ」と意思表示ができるシステムはすでに存在しています。これを応用すれば、「助けてほしい」と思ったときに脳波でナースコールを発信することも技術的には可能。現時点では製品化されていませんが、実現の範囲内です。また、視線や瞬きを使ったコール発信も有望な方法です。これもすでにコンピュータ入力の補助技術として利用されています。
さらに、カメラと画像解析技術も進化しており、患者の動きを監視するシステムが普及してきています。患者がベッドを離れようとしている場合や、異常な動きがあった場合に、アラームを発信することができるのです。以前は、監視カメラの導入に対して抵抗がありましたが、近年では患者の安全を守るため、広く受け入れられるようになってきました。
制御部分の進化
ナースコールシステムの制御部分は、シンプルな呼び出し機能から高度なコンピュータ制御へ進化しました。現在では医用テレメータ、薬剤管理システム、病院情報システムと連携し、患者の状態をリアルタイムで把握できます。この連携により、看護師の業務が効率化され、医療の質が向上します。病院情報システムとナースコールが統合すれば、患者の異常があった場合でも、担当医や看護師がリアルタイムで状況を確認でき、迅速な対応が可能になるのです。
さらに、日常の情報入力や申し送りも1つのサーバに集約。情報共有が効率化されるため、看護師は患者ケアに集中しやすくなります。このようなナースコールシステムの進化により、医療機器との連携が強化され、現場の効率化と安全性が向上するのです。
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