ナースコールシステムは、患者と看護師をつなぐ重要な医療インフラです。医療現場のデジタル化が進むなかで、看護師の負担軽減と効率的なケアを提供するために、いまもなお大きく変化しています。スマートフォンやIoT(モノのインターネット)の導入、データ活用の本格化により、今後どのような進化が期待されるのでしょうか。本記事では、ナースコールシステムの現状とそれに紐づく看護師の過重労働問題について、日本医療福祉設備協会・理事の花田英輔氏が解説します。
鳴りやまないナースコールと看護師にのしかかる負担
ナースコールシステムは進化を続けているものの、現場ではいくつかの問題が残っています。特にナースコールの集中による看護師の過重労働は深刻です。
患者はいつでも簡単にコールをかけることができるため、夜中でも頻繁に呼び出しがあり、コールの洪水状態になっています。また、すべてのコールが看護師に届くため、どのような内容のコールであっても、その都度看護師が対応しなければなりません。これでは看護師の過重労働はなかなか解消されないでしょう。
たとえば「特定の患者からのコールは担当看護師にだけ通知する」といったシステムの設定変更により看護師一人ひとりの負担を軽減することはできそうです。技術的には可能ですが、実際は、シフトや勤務帯ごとに設定していくのは複雑であり、その都度の変更はあまり現実的ではないのです。
また、「何時何分に誰がコールしたか」「どのセンサーからコールが発生したか」といったデータを上手く活用することにより、無駄な労働を減らすことができるかもしれません。しかし現在は、データ活用の途上にあります。ナースコールのデータはほとんど活用されておらず、一部の病院の取り組みとして成功事例が学会などで報告されるくらいです。看護師の過重労働の解消に向けた今後の対策としても期待されるところです。
医師の働き方改革により看護師の負担増
いま、「医師以外の医療職をいかに支援するか」という課題が浮き彫りになっています。日本の医療現場では、2024年4月に施行された医師の働き方改革により医師の労働時間が厳しく制限され、特に時間外労働に対する規制が強化されました。
その結果、医師の業務量を削減するための「タスクシフト」が進められ、医師の業務の一部が他職種へと移行しています。しかし、その多くは看護師に割り当てられていて、看護師の負担が限界に近づいているといった状況が各所で見られます。
加えてポイントになるのが、看護師から看護助手や事務職へのタスクシフトが充分に進んでいない点です。看護師は専門的な知識と技能を持ち、患者ケアに強い責任感を抱えているため、看護助手への業務移行には心理的な抵抗を持つ場合もあります。一方、看護助手には医療行為が法的に許可されておらず、業務範囲の制限により、移行できる業務が限られているのです。
このような現状を改善するためには、ナースコールシステムの運用改善が鍵となります。これらの技術は、看護師が直接対応しなければならない業務を減らし、より専門的なケアに集中できる環境を整えることが可能です。逆の見方をすれば、ナースコールシステムによる業務効率化が進まなければ、医療現場は深刻な人手不足に直面し、地域によっては医療崩壊になりかねません。労働時間の上限規制にも対応しながら、現場の負担をどう分散させて、ケアの質を維持していくかが重要です。さらに、ナースコールシステムの運用改善もこうした関心のなかで行われるべきと考えます。
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国立大学法人佐賀大学 理工学部 教授(数理・情報部門)
・学歴
昭和60年 九州大学工学部情報工学科卒業
昭和62年 九州大学大学院総合理工学研究科情報システム学専攻修士課程修了
平成13年 学位取得(博士(工学)、佐賀大学)「医用電子機器の電磁波障害防止に関する研究」
・職歴
昭和62年 日本電気株式会社入社(C&C情報研究所、平成元年から情報処理金融システム事業部)
平成 4年 長崎大学総合情報処理センター助手
平成 8年 九州大学医学部附属病院助手(医療情報部)
平成14年 島根医科大学医学部附属病院助教授(医療情報部)
(平成15年に大学統合により島根大学、平成19年より職名変更により准教授)
同病院 医療情報部副部長、地域医療連携センター副センター長を併任
同大学 医学部情報ネットワークセンター副センター長を併任
平成14年 メディア教育開発センター客員助教授併任(研究開発部、平成17年度まで)
平成19年 島根大学医学部附属病院個人情報保護教育責任者
平成20年 国士舘大学理工学部非常勤講師(健康医工学系、令和元年度まで)
平成23年 NPO法人しまね医療情報ネットワーク協会理事(平成26年度まで)
平成24年 島根大学医学部附属病院データセンター副センター長を併任
平成26年 佐賀大学大学院工学系研究科教授(知能情報システム学専攻)
平成29年「九州地区の医療機関における電波利用推進協議会」座長
平成30年 佐賀大学理工学部教授(知能情報システム学科、改組による)
平成31年 佐賀大学理工学部教授(情報部門、改組による)
令和 5年 佐賀大学理工学部教授(数理・情報部門、改組による)
・所属学会(いずれも正会員)
日本音響学会、情報処理学会、日本医療情報学会、日本生体医工学会、日本遠隔医療学会、日本医療福祉設備協会(理事)、ITヘルスケア学会、電子情報通信学会、日本医療機器学会
・研究会活動等
日本生体医工学会専門別研究会「医療・福祉における電磁環境研究会」会長(平成19年度~平成24年度、平成29年度~令和4年度)、同会幹事(平成17年度~)
電子情報通信学会「ヘルスケア・医療情報通信技術研究会」専門委員(平成18年度~)、専門委員会委員長(令和2年度~令和3年度)、顧問(令和4年度~)
日本医療福祉設備協会「学術委員会」委員(平成27年度~)
電波環境協議会「医療機関における電波利用推進委員会」副委員長(平成30年度~)
第17回日本医療情報学会春季学術大会プログラム委員長(平成25年6月20日~22日、富山)
第21回日本医療情報学会春季学術大会プログラム委員長(平成29年6月1日~3日、福井)
第51回日本医療福祉設備学会副学会長(令和4年10月27日~28日、東京)
第53回日本医療福祉設備学会学会長(令和6年11月29日~30日、東京)
2024年11月にはコトセラウェビナー(https://www.cotocellar.com/seminars/list)にて「ナースコールとスマートフォン連携」に関する講演を実施した。
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