増加している労基署による申告監督
残業代で揉めるケースが昨今増えています。「サービス残業」や「未払い残業代」といった言葉を新聞やニュースなどで目にしたことがある方も多い事でしょう。これらに関する裁判や労働審判、少額訴訟等も年々増加傾向にあります。労働者の通報を受けて労基署が調査に乗り出す「申告監督」も同様に増えてきています。
裁判にせよ和解にせよ是正指導にせよ、使用者側に支払い義務が発生するケースが圧倒的に多くなることは容易に想像できるかと思います。まとまった未払い残業代の請求等で、事業経営を圧迫するような事態も見受けられます。このようなことから、多様な労働時間管理や定額残業代など賃金にかかわる社内ルールを見直す動きが、ここ数年盛んに行われているように思います。
さて以前、ドラマで『倍返しだ』という台詞が流行りましたね。職業柄、『倍返し』と聞くと、つい『付加金』を思い出してしまいます。付加金については。労働基準法114条に記載がありますが、要約すると、「裁判所は、賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、使用者が支払わなければならない金額についての未払い金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。」というものです。支払わなければいけない額の倍を支払いなさいということですね。
裁判所が命ずるものなので、未払残業代訴訟等、裁判で残業代や休日手当などの割増賃金と合わせて請求することができます。もちろん裁判になったからと言って必ず付加金の支払いが認められるわけではなく、そこは裁判所がケースバイケースで判断することになります。
付加金や遅延利息まで合わせて請求されると・・・
未払残業代に関する労使トラブルが増加傾向にある昨今、それに伴い労基署やユニオンに駆け込む労働者も増えています。未払い残業代でトラブルになれば、是正勧告や団体交渉、最終的には訴訟と会社はたちまち劣勢に立たされます。消滅時効にかからない2年分の未払残業代+付加金、そこに、きっちり遅延利息まで請求されるとかなりまとまった額になります。会社に対しての未払残業代請求の性質上、複数の労働者から芋ずる式に請求(集団請求)が重なりますと、それこそ、『倍返し』どころの騒ぎじゃありません。未払残業代請求で倒産危機になんて話もない話ではないんです。
『付加金』は裁判所から命じられるものなので、原則、裁判にならなければ裁判所も命じようがありません。故に和解を選択すれば良いのかなどと考えがちですが、本題はそこではありませんね。
未払残業代に関してトラブルにならないよう、日々の労務管理及び賃金計算等をしっかり行い、労働者に納得して働いてもらうことで、無駄な労使トラブルを未然に防止して行きましょう。