通帳の残高に「たったそれだけ?」
山田さんも、いよいよ相続手続きをすることになった。
「母親が亡くなったとき、分割するような財産は皆無。預貯金はもちろん、装飾品の類もゼロでした。しかし、あれだけ倹約していた両親なのだから、本当に〈家1軒分〉の遺産があるだろうと思っていたのですが…」
父親に付き添っていた妹は、さまざまな手続きも任されていた。山田さんは妹に父親の資産状況を尋ねると、引き出しから3冊の通帳を取り出した。
「1冊は、年金が振り込まれているもの。生活費に使っているようで、入金と出金が繰り返されており、残高は数十万円。あとの2冊は、それぞれ200万円の入金があるもの。妹がいうには、私と妹それぞれの分、ということらしいのですが…」
「でも、どう考えてもおかしいのです。われわれが子どものころから、恥ずかしいほど倹約していましたから。本当はもっとあるはずだと思いまして…」
山田さんは、介護のために同居していた妹を問いただした。妹は否定したが、山田さんは納得できず、ひとり、亡き父親の使っていた戸棚のなかを探し回った。
「あった――!」