SNS型投資詐欺に蝕まれる高齢者の資産
このような「SNS型投資詐欺」の被害が高齢者のあいだで急増しています。警察庁の統計によると、2023年から2024年9月までの被害者の54.1%が男性で、60代が全体の27.8%を占めています。暗号資産を絡めた1人当たりの平均被害額は1,381万円にも上り、被害総額は前年比で約70%増加。
詐欺グループの手口も巧妙化しています。佐藤さんを騙ったKさんのように、実在の高級車をレンタルし、高級ホテルの一室で撮影した投資セミナー動画をSNSに投稿。「毎月100万円の不労所得」「確実な投資リターン」といった触れ込みで、裕福な生活をアピールします。
特に危険なのが、オンラインゲームやSNSを通じた信頼関係の構築です。人付き合いが苦手な佐藤さんも、「半年以上一緒にゲームを楽しんだ仲間」という理由で警戒心を解いてしまいました。IT知識が豊富でも、心理的な隙を突かれれば、誰もが被害者になり得るのです。
かろうじて手元に残った300万円と月の年金額21万円で、佐藤さんは暮らしていくことに。今後、マンションの管理費・修繕積立金が値上がりしたら住み続けることができなくなるかもしれません。引きこもり生活に戻った佐藤さんの心の傷は計り知れません。
SNS時代の資産防衛術
では、このような詐欺から身を守るには、どうすればよいのでしょうか。
まず、SNSでの投資勧誘には、3つの警戒サインがあります。フォロワー数は購入可能で、高級車や豪邸の写真はレンタルの可能性が高いこと。「毎月〇〇万円の不労所得」という触れ込みには要注意。そして、専用のプラットフォームや特別なウォレットへの送金要求は、最大の危険信号です。
資産運用では、3つのルールを徹底しましょう。投資の検討は必ず1週間以上の熟考期間を設けること。暗号資産への投資は総資産の5%を上限とすること。そして、知人からの紹介であっても、投資の意思決定には「他人の目」を積極的に入れることも重要です。事前に資産運用に明るいFPなどの専門家に相談していれば、投資詐欺の被害を防げた可能性は高かったことでしょう。
趣味を通じた交流は、確かに老後の生活を豊かにします。しかし、SNS時代の人間関係には新たなリスクが潜んでいます。「誰でも騙される可能性がある」という意識を持ち、慎重な資産管理を心がけることが、安定した老後生活への近道となるのです。
三原 由紀
合同会社エミタメ
代表
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