至れり尽くせりの高級老人ホームを退居…その理由
3ヵ月ほど経ったころ、仲良くなったある一組の入居者の夫婦から突然「私たち、このホームを出ようと思うの」と告白されます。Aさんは驚きました。
ご主人は「2年ほどここで暮らしましたが、たしかに毎日は充実しています。食事も美味しいし、時間を費やして楽しむ場所もあり不満はありません。でも『張り合い』がなくなってしまったんです。もう70歳も過ぎたし老人ホームに入ったほうがいい、と思って入居したんですが、まだまだ体は動くし頭も働くと思っています。この建物の中で生活は十分に成り立ちますが、気が付けば全然外に出ない日が何日もあるんですよ。会社はとっくに息子に任せてしまいましたが、自分はまだなにか社会に貢献できるのではないか、と最近考えるようになりまして。外に出て、また心機一転、頑張ってみようと思うんです」といいます。
Aさんは思わず「奥さんはいいんですか?」と聞いてみました。奥さんのほうは「2人で四六時中一緒にいるのもなかなか辛いものよ。それに主人の元気のない顔を見ているとこっちまで暗くなっちゃうわ」といいます。
立派な施設でもやはり老人ホーム。当然、いろいろな人がいます。退居を決めた夫婦のように元気な人ばかりではありません。「前はできたのにね」こんな会話がいつしか日常となっています。体の自由が利かなくなった老人たちを見る、とAさんも「自分もやがてはこうなるのか」と思ってしまい、仲良しだった夫婦の退居を心から寂しく感じました。
ある日、俳句の会で
そんなある日、Aさんが参加している俳句の会でトラブルが起きます。Aさんがほかの人の作品にちょっと意見したところ、「やっぱり裕福な人の考え方は違うわねぇ」「タワマンなんて高い所からものを見ている人は発想がちがうのよ」と、数人の人たちから茶化されたようにいわれてしまいました。Aさんは、この人たちは私のことをそんな風に見ていたんだ、とショックを受けます。
それからというもの、Aさんは行き場のない孤独感を感じるようになり、自室に閉じこもるようになります。ある日、AさんはBさんに電話をして、泣きながら寂しさを訴えました。するとBさんは「気丈な叔母様が泣くなんてやっぱり年なんじゃないの? 合わないなら出ちゃえばいいじゃない」と後押しされました。
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