共通点③…加入したい・買いたいと感じるのは、脳の錯覚の影響
目の錯覚は有名ですが、脳も錯覚します。たとえば、非常に低い確率は実際より高いと感じるのです。宝くじが当たるような気がするのも飛行機が落ちそうな気がするのも、この錯覚によるものです。自分が死んだり運転で大事故を引き起こしたりするリスクが気になるのも、この錯覚のせいでしょう。
この錯覚が、宝くじを買いたいと思わせたり保険に加入しようと思わせていたりするのであれば、保険会社や宝くじ発行体にとって都合のよい錯覚ですね。一方で、宝くじを買った人や保険に入った人にとっても、宝くじを買ったり保険に加入したりするメリットを大きくしているのです。
「当たったら何を買おうかな」とワクワクしながら当選番号発表を待つ喜びが大きくなるわけですし、万が一のことがあったらどうしよう、という不安が大きいために保険に入ったことで大きな安心感を得ることができるわけですから。
本質は同じもの
実は、保険と宝くじの本質は同じなのです。皆から金を集めて特定の人に大金を渡す、というものだからです。保険の場合は運の悪い人に、宝くじの場合は運のいい人に、という違いがあるだけです。
「自分が死んだら遺族に保険金が支払われる」というのが生命保険ですが、「隣の村長が死んだらあなたに保険金を支払います」というのは宝くじですね。もっとも、実際にはそんな保険は売っていません。隣の村長が死ぬことを望む人が出てくるだけでも問題ですし、万が一にも隣の村長を殺そうとする人が出てくると困りますから。
実際に売っているのは、株価暴落保険(プットオプションという名前です)です。仕組みは複雑ですが、「プットオプションを買って持っていると、株価が暴落しなければ何ももらえないが、株価が暴落したら大金がもらえる」と考えてください。
もともとは、株を持っている人が「株価が暴落したときの損失を補填してもらう」ために買うもの(保険)として開発されたわけですが、株を持っていない人が買えば宝くじと同じですね。少ない資金で大儲けを狙うことができるわけですから。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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