今回は、「司法書士費用」に関する裁判例を見ていきます。※本連載では、犬塚浩氏監修・共著『Q&A建築瑕疵損害賠償の実務 ―損害項目と賠償額の分析―』(創耕舎)より一部を抜粋し、建築瑕疵(欠陥)によって起きた裁判のうち、「契約費用関係」の判例を中心にご紹介します。

因果関係があれば損害として認められる

Q 不動産に関する紛争において、司法書士費用は損害に含まれるのでしょうか。

 

A 土地並びに建物に関する債務不履行責任、不法行為責任における損害には司法書士費用も含まれる。

 

【肯定例】

損害として司法書士に支払った金額のうち、因果関係の認められる範囲については損害として認められている。

 

◦東京地判平成6年12月16日判タ891号139頁

地主から土地を借りてマンションを建築する計画が、借地人・保証人(事前求償権者)により破棄され、マンション建築計画が頓挫したという事案につき、マンション建築計画のパートナー(主債務者)から借地人(保証人)に対する損害賠償請求を認め、マンション建築計画遂行のために支払った司法書士費用として請求額80万7580円のうち因果関係の認められる範囲として22万9760円を認めた。

▶マンション⇒司法書士費用−請求額(80万7580円)・認容額(22万9760円)

 

【否定例】

損害賠償請求が否定される場合には、司法書士費用の請求も認められない。

 

◦東京地判平成26年4月28日判例秘書L06930345

土地を購入した買主が仲介業者に対し、近隣に暴力団関係団体事務所のビルがあることの調査説明義務に違反したとして、債務不履行または不法行為に基づく損害賠償請求として司法書士費用(6万3382円)等の支払を求めた事案につき、当該ビルに関する事情は重要事項に該当するが、仲介業者が説明義務を負うのは当該ビルに暴力団関係団体事務所が存在すると認識していた場合であるとして請求を否定した。

▶土地⇒司法書士費用−請求額(6万3382円)・認容額(0円)

Q&A建築瑕疵損害賠償の実務  ―損害項目と賠償額の分析―

Q&A建築瑕疵損害賠償の実務 ―損害項目と賠償額の分析―

犬塚 浩 永 滋康 宮田 義晃 西浦 善彦 石橋 京士 堀岡 咲子

創耕舎

建築瑕疵の裁判例から重要なものを抽出し、その概要・損害賠償の可否・請求費目・具体的金額等を事案ごとに整理・分析し、住宅紛争処理の迅速かつ適切な解決・予防のために有益な書籍。

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