今回は、不動産の「競売手続」「競売代金」に関する裁判例について見ていきます。※本連載では、犬塚浩氏監修・共著『Q&A建築瑕疵損害賠償の実務 ―損害項目と賠償額の分析―』(創耕舎)より一部を抜粋し、建築瑕疵(欠陥)によって起きた裁判のうち、「契約費用関係」の判例を中心にご紹介します。

「国家賠償請求」が認められた判例

Q 競売手続に不備があった場合、競売代金の支払を認めてもらうことはできるのでしょうか。

 

A 国家賠償請求は認めたが、損害金は最低競売価格の範囲であると判断された事例(肯定例)がある。なお、国家賠償請求は、民事執行法上の救済手続に基づく権利行使をしていなくても認められる。また、敷地利用権のない建物が競落されても国家賠償請求権が否定されたことは参考になる(否定例)。

 

肯定例

国家賠償請求が認められるとしても、損害については、最低競売価格に限定されている。

 

◦札幌地判平成6年3月3日判時1525号139頁

執行官及び評価人の調査の誤りによって損害を被ったと主張する買受人が、執行法上の救済手段を取らなかったとしても、国家賠償請求権を行使することに問題はないとし、損害としては競売代金として納付した280万円のうち最低売却価格196万円に限定して因果関係があるとされた。

▶土地⇒競落代金−請求額(280万円)・認容額(196万円)

 

否定例

登記官、執行官に過失が認められない場合には国家賠償請求が否定されている。

那覇地判平成7年6月28日判タ888号176頁

登記簿謄本及び現況調査報告書に誤った記載があったため、敷地利用権のない建物が競落された事案につき、登記官及び執行官には過失が認められないとして、競落人からの競売代金と土地の時価の差額分768万1350円の国家賠償請求が否定された。

▶土地、建物⇒競売代金−請求額(768万1350円)・認容額(0円)

Q&A建築瑕疵損害賠償の実務  ―損害項目と賠償額の分析―

Q&A建築瑕疵損害賠償の実務 ―損害項目と賠償額の分析―

犬塚 浩 永 滋康 宮田 義晃 西浦 善彦 石橋 京士 堀岡 咲子

創耕舎

建築瑕疵の裁判例から重要なものを抽出し、その概要・損害賠償の可否・請求費目・具体的金額等を事案ごとに整理・分析し、住宅紛争処理の迅速かつ適切な解決・予防のために有益な書籍。

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