印紙代が損害金として認められる場合とは?
Q 契約書等に貼付した印紙代も損害金に含まれるのでしょうか。
A 契約の効力が否定された場合、債務不履行責任または不法行為責任が認められた場合には印紙代を損害金として認めている。
ただし、因果関係がないなどの理由で損害として認められないケースもある。なお、暴力団関係団体事務所が存在することに関して仲介業者の説明義務違反が認められるのはあくまで仲介業者が暴力団関係段事務所の「存在を認識していた場合」とする否定例〈①東京地判H26・4・28〉は説明義務の範囲として参考となる。
肯定例
損害賠償請求等が認められる場合には印紙代も基本的に損害として認められている。
①東京地判平成25年12月13日判例秘書L06830960
マンション解体工事の請負契約を締結した後、請負人の仕事完成前に注文者が契約を解除した事案につき、注文者の請負人に対する解体契約書の印紙代半額(2万2500円)等の返還請求を認めた。
▶マンション⇒印紙代−請求額(2万2500円)・認容額(2万2500円)
②横浜地判平成24年1月31日判タ1389号155頁・判時2146号91頁
マンションの耐震強度が不足していた事案につき、建築確認を行った指定確認検査機関に対する損害賠償請求権を肯定し、売買契約印紙代を損害として認めた。
▶マンション⇒印紙代−請求額(不明)・認容額(不明)
③東京地判平成20年12月1日判例秘書L06332564
建設会社従業員から執拗にマンション経営の勧誘を受けた結果、意に反してマンション建築請負契約を締結させられるなどして多額の金銭を出費させられたことにつき、建築会社に不法行為責任を肯定し、契約書印紙代等の支払請求を認めた。なお、4割の過失相殺がなされている。
▶マンション⇒印紙代−請求額(不明)・認容額(不明)
④東京地判平成10年5月13日判時1666号85頁
売買の対象となった建物に瑕疵が存在したことにつき、仲介業者以外に仲介的役割を果たした銀行や税理士の告知義務違反に基づく不法行為責任を認めて、買主の賠償請求(印紙代)を認容した。
▶雑居ビル⇒印紙代−請求額(40万円)・認容額(40万円)
⑤東京地判平成6年12月16日判タ891号139頁
地主から土地を借りてマンションを建築する計画が、借地人・保証人(事前求償権者)により破棄され、マンション建築計画が頓挫したという事案につき、マンション建築計画のパートナー(主債務者)から借地人(保証人)に対する損害賠償請求を認め、工事業者との請負契約に伴う費用のうち収入印紙代10万円についての損害賠償請求を認めた。
▶マンション⇒収入印紙代−請求額(10万円)・認容額(10万円)
「印紙代」の請求が否定された例
否定例
「土地を保有していることに伴って生じた負担」であるから仲介業者の債務不履行による損害として否定された〈②東京高判H12・10・26〉、違約金の定めがあるとして否定された〈③東京地判H5・12・16〉は参考になる。
①東京地判平成26年4月28日判例秘書L06930345
土地を購入した買主が仲介業者に対し、近隣に暴力団関係団体事務所のビルがあることの調査説明義務に違反したとして、債務不履行または不法行為に基づく損害賠償請求として印紙代(8万円)等の支払を求めた事案につき、当該ビルに関する事情は重要事項に該当するが、仲介業者が説明義務を負うのは当該ビルに暴力団関係団体事務所が存在すると認識していた場合であるとして請求を否定した。
▶土地⇒印紙代−請求額(8万円)・認容額(0円)
②東京高判平成12年10月26日判時1739号53頁
がけ地を含む土地マンションの売買につき、不動産仲介業者が関係法令に基づく規制があること、利用が大幅に制限され、多額の擁壁工事費用が生じることも説明しなかった場合には、仲介業者の善管注意義務違反に基づく賠償義務を認めるも、契約書添付用収入印紙代については土地を保有していることに伴って生じた負担であり、仲介業者の債務不履行に基づく損害とはいえないとして否定した。
▶土地⇒収入印紙代−請求額(10万円)・認容額(0円)
③東京地判平成5年12月16日判タ849号210頁
転売目的の鉄筋コンクリート造マンション売買契約において建築基準法上の完了検査済証を交付することが予め特約として定められていたにもかかわらず交付できなかった事案につき、完了済検査証がない場合の不都合等も斟酌して買主からの解除請求を認めたが、違約金の定め(代金の20%)があり、この損害賠償額の予定の推定を覆す反証がないことから売買契約書に貼付した印紙代等の損害賠償請求は否定した。
▶鉄筋コンクリート造マンション⇒印紙代−請求額(6万6666円)・認容額(0円)