(※写真はイメージです/PIXTA)

先月行われた衆院選では、与党である自民・公明両党の獲得議席数が過半数割れとなり、「与党敗北」の結果に。これにより、日本の政治基盤がより不安定になることで、さまざまな懸念点が起こりうる、とフィデリティ・インスティテュート主席研究員でマクロストラテジストの重見吉徳氏はいいます。日本人投資家が今後とるべき姿勢について、本記事で詳しくみていきましょう。

財政に頼らない政策や企業改革は「積極化」する可能性

目先の話をすれば、補正予算に関する野党への協力模索を含め、日本株市場はいくぶん不安定な状況に置かれる可能性があります。

 

米国での新政権の誕生は、資本市場の動きを通じてのみならず、新たな外交・通商・経済・産業政策が日本の経済全般や企業の競争環境にも影響を与えますから、不確実性をもたらす材料です。

 

ただし、日本の株式市場の投資家にとってより重要である中長期的な株価の動向を考えると、①経済政策の観点では、企業統治改革(持ち合いの解消や株主還元の積極化を含む)、資産運用立国、労働市場の流動化、(ライドシェア解禁に象徴される)国内の各種規制の緩和、海外人材の受け入れ積極化など、財政の関与が小さく、なおかつ国内外の投資家が好む政策は継続され、むしろ積極化する可能性があるでしょう。

 

政権基盤が弱くなるほど、(財政均衡を志向する)財務省や(国際投資家の意向をくむ)米国の新政権の影響力が増すため、こうした(財政に頼らない)現実的な政策は(新たな政権基盤が自民・公明・維新・国民の枠組みである限り)これまでに考えられていたよりも早く進むかもしれません。

 

また、そうした経済政策の方向性に加え、中長期的な株価は、②企業のファンダメンタルズを反映します。

 

日本企業の収益性向上に向けた取り組みは始まったばかりです。日本企業は、過当競争の解消や株主還元の積極化などにより、他国に比べ、マージン(利益)やROE・ROIC(株主資本利益率・投下資本利益率)といった資本効率を引き上げる余地が大きいと考えられます。

 

[図表3]日米株式のマージン(利益率、実績値、水準、1株ベース)
[図表3]日米株式のマージン(利益率、実績値、水準、1株ベース)

 

加えて、そうした日本企業の「内からの改革」のみならず、米国やアジアの有力企業は日本を設備投資や研究開発の拠点として選択する例も広がっています。限られた経済政策や積極的な企業改革が日本企業のファンダメンタルズや株価を押し上げていく状況にはまったく変わりがないと考えられます。

 

日本株式市場の投資家は、経済政策や企業の統治改革といった中長期の方向性をしっかりと見据えて、投資行動を決定すべきでしょう。

 

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