退職と同時に「円満離婚」した71歳・元消防士
市川マサオさん(仮名:71歳)は高校卒業後、幼い頃からの夢であった消防士となり地元の町で働き始めます。
25歳のときに中学の同級生と結婚。一男一女を育て上げました。夫婦仲は悪いというわけではなかったものの、社交的な妻と内向的なマサオさんとの価値観の違いが長年の間に徐々に深まり、60歳の定年を機に離婚する決断をします。
子どもたちはすでに独立していて、2年前には両親も相次いで他界しています。マサオさんは、やっと重い荷物を下ろせるという気持ちとなり、一から第二の人生を始めるのも悪くないと考えたそうです。
いわゆる円満離婚です。
持ち家と資産の一部は財産分与で元妻へ
婚姻期間中、マサオさんの妻は、パート勤めで家計を助け、家事や育児も人並み以上に頑張ってきました。
法的には、婚姻中に築いた財産や負債はその名義にかかわらず共有の財産とみなし、半分ずつ分け合うとする原則があります。ただ、二人の合意があれば、財産分与は任意の割合で構いません。
マサオさんの資産は、家と退職金を含めた預金が2,500万円です。住宅ローンは完済しており、その他の負債はありません。二人は協議の上、預貯金のうち1,000万円と家を妻が取得し、マサオさんは1,500万円をもって隣市にマンションを借りて暮らすことになりました。
マサオさんの暮らしは老齢年金が支えていくことになりますが、マサオさんは妻への年金分割にも合意しているため、年金受給額は月20万円です。
年金分割とは?
年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金保険料に相当する年金額を年金の多いほうから少ないほうへ分割する制度。特に、専業主婦(夫)や扶養内で働いてきて厚生年金の受給がない側にメリットがあります。年金分割には次の2つの方法があります。
合意分割
按分割合が当事者間の合意によって決められます。合意がまとまらない場合は、どちらかの請求により、裁判手続き(調停または審判)によって決定します。2007年4月1日以後の離婚が対象となります。
3号分割
当事者双方の合意は必要ありません。2008年4月1日以後の婚姻期間中の相手方の厚生年金金額から1/2を、国民年金第3号保険者である妻(夫)へ分割する制度です。
ともに、請求期限は離婚の翌日から2年以内となります。