昔は『サザエさん』今は『ワンピース』が景気のバロメーター?
こうした日常の生活行動のなかで、景気変動との相関がみられるのが、実はテレビ視聴と言われています。特に、国民的アニメである『サザエさん』(フジテレビ)や現在でもしばしば視聴率20%を超える長寿番組『笑点』(日本テレビ)などが、景気との関連性を指摘されてきました。
いずれも日曜日の夕方に放送され(一部地域を除く、以下同)、この時間帯に自宅でテレビを観みて過ごしていると想定されることから、番組の視聴率が高いと景気は悪く、視聴率が低いと景気は良好だといった見方がなされています。
しかし、新型コロナウイルス感染症以前のデータになりますが、近年では、少し様相が異なってきているようです。2015年~2019年のデータを用いて、帝国データバンクの景気DIとテレビ視聴率(ビデオリサーチ調べ、リアルタイム視聴率、関東地区)の相関関係を分析すると、日曜日の朝に放送されている『ONE PIECE(ワンピース)』(フジテレビ)との相関が最も高いという結果となりました。
時差分析ではワンピースの視聴率が景気DIを概ね4カ月先行して動いており、景気の先行きを見通すにはちょうど良い指標となることが示唆されます。簡便な回帰分析を実施したところ、ワンピースの視聴率が1ポイント上昇すると、4カ月後の景気DIは約0.37ポイント低下するとの結果もみられました。
なぜ、景気動向とテレビ視聴率の関係性が夕方から朝に変化したのでしょうか。一つの理由として、日曜日の朝(7時~9時30分)の在宅率が、20年前に比べて、低下していることが考えられます。背景には、経済のサービス化が進展したことなどにともない、日曜日に仕事をしている人が少しずつ増えていることです。そのため、日曜日の朝がより景気に対して敏感に反応する傾向が表われてきた可能性もあるでしょう。
しかしながら、若者を中心に幅広い年齢層でインターネットを利用する時間が増加しているという事実もあるので、人びとのテレビ視聴時間は減少傾向が続いています。加えて、コロナ禍を経て、新型コロナの流行以前とは行動変容が生じています。
娯楽の王様と言われて久しいテレビですが、さまざまな社会背景の変化をともないながらも、景気動向と視聴率の関係性はいままでと少し違った見方で捉えていく必要があるかもしれません。
帝国データバンク情報統括部
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