「怒るか」「怒らないか」はどう決めればいいのか?
「怒る」「怒らない」の境界線を明確にする
怒ると決めたことについては適切な怒り方ができる、怒らなくていいことには怒らなくてすむようになる──。
そのためには、「怒る」「怒らない」の境界線(「べき」の許容範囲)を明確にすることが大切です。とくに、長く関係の続く相手とは、お互いの境界線を明確にしながら付き合いましょう。
事例
約束した仕事の期限はちゃんと守るべき
①約束した期限のジャストタイムまでに、成果物が仕上がり、報告もすませる
②間に合わないのであれば、せめて期限日の前日の就業時間中に、理由と現状を報告する
③間に合わないという報告が、前日の就業時間を超える。または報告もなく、期限も守らない
※基準は図1の「怒る」「怒らない」の境界線
「約束した仕事の期限をちゃんと守るべき」「守れないのであれば、前もって報告すべき」というように、曖昧な表現で「べき」を伝え、境界線が不明確になってしまっていることはないでしょうか? 一度見直してみてください。
境界線について心がけたい3つのこと
1.境界線を広げる努力をする
自分の「べき」の許容範囲が狭く①しかないと、ついイライラしがちになってしまいます……。
→「せめて◯◯であればOK」「少なくとも◯◯してくれればOK」「最低限◯◯ならばOK」と、許容範囲を少しでも広げられないか考えましょう。
これをしていると、許容範囲が少し広がり、イライラが軽減していきます。
2.境界線を一定にする努力をする
自分の機嫌によって、境界線をコロコロ変えると、相手を戸惑わせてしまいます……。
NG例:部下に対して「時間を守るべき」を伝えたくて叱る場合
前回は機嫌がよかったため、会議開始時間より3分遅れても叱らなかったのに、機嫌が悪いときには、会議開始時間ちょうどに来たのに「ギリギリすぎる。5分前には来るように!」と叱った。
→境界線の広さを、自分の機嫌によって広くしたり、狭くしたりすることのないようにしましょう。
3.境界線を伝える努力をする
日頃から、次のことを意識してみてください。
・「言わなくてもわかるはず」と思い込んでいないか、振り返ってみる
・自分がどのような「べき」を持っていて、何をどのようにしてほしいのかを相手に具体的に伝える
・「ちゃんと」「しっかり」といった曖昧な表現は避ける
そうすると、お互いのズレがなくなります。
「怒り」で失敗しないためにはどうしたらよいか?
後悔しないほうを選ぶ
大切なことは、怒る必要のあることと、怒る必要のないことの線引きができることです。
「べき」の境界線(三重丸)の②③の間が、それに該当します(図5参照)。もし②か③、どちらに入ることなのか迷ったら、後悔しないのはどちらかという基準で判断しましょう。アンガーマネジメントは、怒りで後悔しないことを目指します。
②を選択したものの、あとになって「許容できないと言っておけばよかった」「怒る必要があった……」と悔やんでしまった経験をしたなら、次からは③にしましょう。
逆に、③の対応をしたものの、あとから「あそこまで言う必要がなかった……」「怒る必要はなかったな……」と省みることになったなら、それ以後は②にする、というように、境界線をどこにするか、再度検討してもいいのです。
この繰り返しのなかで、怒りをうまく扱えるようになっていきましょう。
アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事
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