一発否認となる「家族旅行」
次に2つ目が、家族旅行。「家族」というより、取締役に入っている方とその家族全員で行った旅行も慰安旅行として経費に計上している経営者もよく見られます。もちろん税務調査では簡単に見つかって一発否認です。
というのも、旅行の領収書は、行った場所はもちろん人数まで書かれています。となると、完全に取締役の人数と合いませんので、身内だけで行った家族旅行だと判断されます。「せめて取締役の分だけでも慰安旅行として経費計上は認められるのでは?」という考え方もあるかもしれません。しかし、これも完全にアウトです。
旅行に行くなら、従業員全員が行くレベルでないと「旅行」が経費になることはないと思ってください。むしろ、仕事用だといって買った、高級車や高級ブランド品のほうが、まだ見られ方は緩いなとも感じます。
そのほか、こんなものも否認されている…
ジンギスカン屋さんの事例では、以下のようなものも否認されました。
1.収入印紙
印紙は領収書を頻繁に発行する飲食業でしかあまりかかわりがないかもしれません。印紙の貼り忘れなんて、領収書はすでにお客に渡しているので現物がない以上、どうやって貼り忘れを断定できるのでしょう。
ちなみに、印紙は5万円以上の領収書に貼る必要があります。この場合、税務署は、1回につき5万円以上の売上をピックアップして、購入した印紙の枚数との整合性をチェックします。本来あるべき印紙の購入金額と、実際の印紙に購入金額を比較し、足りていない部分が印紙税法違反の金額になります。領収書はすでにお客に渡しているからと、収入印紙についてずぼらな飲食店の経営者は気を付けたほうがいいです。
2.2台目の高級車
これも常識で考えればわかると思います。仮に、会社名義で購入したとしても、事業用でない要素があれば簡単に否認されます。下手をしたら、役員への報酬だと判定されて、役員本人に給与課税がされる可能性もあります。今回の経営者は、2台目としてポルシェを経費計上していました。
3.役員への貸付金
これもよく見られます。会社から役員へお金を貸し付けること自体は、取引上ありえます。ただ、貸したまま数年間まったく返ってきている様子がないと、役員への報酬とみなされる可能性もあります。仮に報酬とみなされた場合、役員本人にも給与課税がされますため、二重に痛いです。会社から本人にお金を移動することはありえますが、イコール返さなくてもいいというわけではありません。いつかは会社に戻さなければならないお金だということを常に頭へ入れておいてください。
以上のように、税務調査が入ったときに、この辺は確実に見られる経費をいくつか挙げてみました。常識から考えて、これは経費にするのはどうかと思うものを経費計上した場合、税務調査では確実に指摘されると思っておきましょう。
もちろん、経費が否認されるかどうかは税務署の判断になります。ただ、探られてヒヤヒヤしたくないのであれば、あらかじめ経費にはしないでおくのが無難です。税務調査を経験したことない経営者や飲食業をされている方は、ぜひご参考になさってください。
清川 英哲
株式会社アートリエールコンサルティング
税理士/公認会計士/証券アナリスト/CFP/宅地建物取引士