前週の米ドル/円の振り返り
為替市場では、パウエルFRB議長が大幅な利下げに慎重な姿勢を示したことや、日銀が公表した9月開催の金融政策の主な意見で利上げを急がない姿勢が示されたこと、石破首相が追加利上げに慎重な考えを示したことなどから、日米金利差を意識した円売り米ドル買いが優勢となり、10月4日には1米ドル=146.72円と9月27日(145.53円)に比べ、円安米ドル高となりました(図表1)。
9月の日銀会合では、追加利上げに慎重な意見が相次ぐ
日銀が9月19日、20日に開催した金融政策決定会合での「主な意見」が公表され、会合後の記者会見で植田総裁から示された見解に概ね沿った内容となりました(図表2)。
今後の金融政策運営について、「金融緩和の度合いを調整していくという基本的な考え方に変わりはない」との方針を維持しつつ、「最近の円安修正に伴って、輸入物価上昇による物価上振れリスクも減少しているので、見極めるための時間的余裕はある」として、利上げを急がない姿勢が示されました。
政策委員が利上げ方針を示しつつも、当面は慎重姿勢を維持する背景には、海外経済の不確実性があります。ある政策委員は、「当面は、米国はじめ海外経済や金融資本市場の動向と、それらが見通し・リスク・確度に及ぼす影響を見極めるべき局面である」との認識を示しました。また、7月会合でのサプライズ利上げが金融市場の急変動のきっかけとなった経緯もあり、ある政策委員は「市場との対話を従来以上に丁寧に行う必要がある」と、市場との対話を重視する指摘もみられました。
日銀が公表した短観(9月調査)では、注目度の高い大企業製造業の業況判断DI が13と、前回6月調査から横ばいとなりました(図表3)。
大手自動車メーカーの認証試験不正問題に伴う自動車の生産・販売停止の影響が和らぐなか、IT関連需要が回復傾向にあることが電気機械などの景況感を下支えした一方で、8月の台風など自然災害による工場停止の影響が自動車の景況感を下押ししたとみられます。
一方、大企業非製造業は34(6月︓33)と、引き続きインバウンド需要の増加が宿泊・飲食サービスなどの景況感を下支えしたほか、猛暑により夏物商材などの売れ行きが好調となった小売がけん引しました。
先行き(3ヵ月後)の景況感については、製造業(14)が小幅ながら改善する一方で、非製造業(28)では悪化が見込まれています。非製造業については、物価高による消費への悪影響や、円高によるインバウンド需要減退への懸念などが影響しているとみられます。
2024年度の設備投資計画は前年比+8.9%と、6月調査(同+8.4%)から小幅に上方修正されました(図表4)。業績回復を背景とした投資余力の改善に加え、脱炭素・DX・省力化などに向けた投資需要が投資計画を押し上げたと考えられます。