海の近くで写真撮影すると「スパイ行為」と見なされることも…中国で実際に起こった“国家秘密漏洩”による処罰事例

海の近くで写真撮影すると「スパイ行為」と見なされることも…中国で実際に起こった“国家秘密漏洩”による処罰事例
(※写真はイメージです/PIXTA)

中国で近年増加している「スパイ容疑・スパイ罪」による逮捕。その気がなくとも、観光目的で写真を撮ったことが「スパイ行為」とみなされてしまうことも……。そこで本記事では、中国法に詳しい村尾龍雄氏の著書『中国ビジネスに関わる人のための「反スパイ法・スパイ罪」入門』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、写真撮影によってスパイ容疑・スパイ罪として逮捕された事例から、中国を訪れて写真を撮る際に注意すべきポイントについて詳しく解説します。

軍港付近の風景などの写真の提供をめぐる処罰事例

人をだまし、結託して国家秘密を窃取、売却

近年、ネット上で境外の諜報機関が、求職や学術研究、ビジネス提携、交友・恋愛等のさまざまな名目で、わが国(中国)の人々だけでなく、さらには学生までも言葉巧みにだましたり、彼らと結託したりして国家秘密を盗み取り、売却していることがわかっている。

 

2019年、大学生のBは「舟山全職兼職普工」というQQグループでアルバイトを探していた。

 

あるメンバーがBにQQ友達申請をしたうえで、「ある軍港付近の地図情報の収集および通り沿いの店の撮影をする」というアルバイトを紹介した。条件は「1日3時間、週3日勤務、日当200元(約4400円)」とのことだった。

 

Bは、求められたとおりQQを通じて職務経歴書や位置情報およびWeChatの金銭受取コードを相手方に送信した。その後、相手方の求めに応じて、その地区にある見晴らしの良い高台の頂上や公園、病院付近に行って、わが国の軍事目標およびその付近の通りの店舗や道路状況等を毎回100~200枚撮影し、合計8回メールで相手方に送った。

 

さらに、Bは境外の情報機関のエージェントの求めに応じて、ネットで望遠カメラを購入して観測したり、船を借りてわが国(中国)のある艦隊に近づいて観察や情報収集をしたり、境外諜報機関への注意喚起を計10回実施した。

 

この間、境外の諜報機関はBに安全研修を行い、「観察記録を主とし、撮影を補とする」という方法で軍艦のペナントナンバーを調べ、報告することを求めた。

 

2019年12月、舟山市中級人民法院は、境外のため国家秘密を不法に提供した罪により、Bを有期懲役5年6カ月、政治的権利剥奪1年の刑に処した。

 

アドバイス:

  • 地図情報の収集については、外国の組織または個人による「測量製図(测绘)」活動の場合は、国務院と軍の主管部門の共同認可が必要です。【※】
  • 軍港などの軍事施設付近においては、位置情報の収集や、見晴らしのよい場所からの写真撮影などもすべきではありません。

 

※測量製図法  第8条 外国の組織または個人は、中華人民共和国の領域および中華人民共和国が管轄するその他の海域において測量製図活動に従事するにあたり、国務院の測量製図地理情報主管部門による軍隊の測量製図主管部門との共同の認可を経て、かつ、中華人民共和国の関係する法律および行政法規の規定を遵守しなければならない。

 

第2項 外国の組織または個人は、中華人民共和国の領域において測量製図活動に従事するにあたり、中華人民共和国の関係部門または単位と合作して行わなければならず、かつ、国家秘密にかかわってはならず、および国の安全に害を及ぼしてはならない。

参考:「警钟!浙江一高校学生窃取出卖国家秘密,被判刑5年6个月!」

 

 

村尾 龍雄

キャストグローバルグループ

CEO

 

※本連載は、村尾龍雄氏の著書『中国ビジネスに関わる人のための「反スパイ法・スパイ罪」入門』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

中国ビジネスに関わる人のための「反スパイ法・スパイ罪」入門

中国ビジネスに関わる人のための「反スパイ法・スパイ罪」入門

村尾 龍雄

幻冬舎

スパイ容疑から身を守る! 安心して中国でビジネスを行うために―― 拘束・逮捕のリスクを回避するための知識を網羅! 日本にとって最大の貿易相手国である中国には、仕事などで滞在している日本人が10万人以上いますが…

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