〈石破ショック〉で急落したドル/円相場…今後、再びの“円安”へと戻る可能性は?→国際金融アナリストの回答

10月の「FX投資戦略」ポイント

〈石破ショック〉で急落したドル/円相場…今後、再びの“円安”へと戻る可能性は?→国際金融アナリストの回答
(※画像はイメージです/PIXTA)

9月には一時「1ドル=140円割れ」となった米ドル/円。しかし、米利下げの実施後、なぜか米ドル/円は反発へと転換しました。その理由と10月の相場の展開予測について、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が解説します。

10月の注目点=米ドル高・円安への戻り、鍵は米雇用

それにしても、米ドル/円は一時140円割れまで下落したことで、過去1年の平均値である52週MAを本格的に割り込みました(図表5参照)。

 

出所:
[図表5]米ドル/円と52週MA(2000年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

経験的には、このような動きは一時的ではなく、複数年続く継続的な動き、つまりトレンドがこれまでの円安から円高へ転換した可能性が高いことを示すものです。

 

そうであれば、円高トレンドと逆行する円安はあくまで一時的、限定的にとどまる可能性が高いでしょう。過去の経験を今回に当てはめると、一時的な米ドル高・円安は、最大でも足下で150円程度の52週MA前後までにとどまる可能性が高いという見通しになります。

 

一時的な米ドル高・円安だとしても、それは150円まで続くのか、それともその前に失速するのか。そういったことが、この10月の米ドル/円を考えるうえでの最大の焦点になるでしょう。

 

そのうえで、まず注目されるのが4日に予定されている米9月雇用統計発表です。

 

足下、7~9月期の米実質GDP伸び率は、定評のある経済予測モデル「GDPナウ」によると3.1%との予想。景気減速の兆しはありません。

 

にもかかわらず、9月FOMCが0.5%の大幅利下げを決めたのは、景気に遅行する雇用の急悪化を回避するために先手を打ったとの見方が基本でしょう。その意味では、この9月雇用統計の結果も、今後の米利下げペースを考えるうえでの重要な参考材料になると言えます。

 

ちなみに、米ドル/円が150円に達するためには、この間の日米2年債利回り差との関係を参考にすると、金利差米ドル優位が3.8%程度まで拡大する必要がありそうです(図表6参照)。

 

出所:

[図表6]米ドル/円と日米2年債利回り差(2024年7月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

この間の日本の2年債利回りの最高は0.46%なので、日米金利差の米ドル優位3.8%を達成するためには、少なくとも米2年債利回りは4.25%以上への上昇が必要といった見通しになるでしょう。

 

9月FOMCが更新したメンバーの経済見通し「ドット・チャート」の2024年末のFFレート予想中心値は4.4%、つまりFFレートは現行の誘導目標4.75~5%が、年末には4.25~4.5%へ引き下げられるとの見通しになっていました。

 

その意味では、金融政策を反映する米2年債利回りが4.25%以上に上昇するのは、「ドット・チャート」の予想ほど年末までに利下げが実施されない、例えば残る2回のFOMCで0.25%の連続利下げを実施するといった見通しに対して、少なくとも1回の利下げは実施しないといった見通しが出てくることが必要と考えられます。

 

残る2回のFOMCで、9月の「ドット・チャート」通り合計0.5%以上の追加利下げが実施されるなら、米ドル高・円安への戻りは限られ、追加利下げがそれ以下になるようなら、9月の米ドル高値の147円を更新する米ドル高・円安へ向かう可能性があるというのが、当面の基本的なイメージになるかと思います。

 

以上を踏まえると、10月は、米ドル高・円安への戻りの限界を試す局面といった位置付けになるのではないでしょうか。

 

米ドル/円は、9月も139~147円と最大値幅は7円以上の大幅となりました。引き続きボラティリティの高い状況が続いていることも踏まえたうえで、147円を大きく越える円安の戻りは難しいとの考え方から、10月の米ドル/円の予想レンジは、140~147円で想定します。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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