いまだに「怖い病気」だと思われている“がん”
「その主治医の先生は素晴らしいですね」今回の取材のきっかけにもなった、乳がんの宣告のときの話をしたところ、深くうなずいた若尾医師。
「がんの5年相対生存率は男女計で62.1%で年々伸びてきています。女性に多い乳がんにいたっては91.1%とがん種によっては完治が期待できるものもありますが、内閣府の世論調査によると『がん全体の5年生存率は50%を超えている』と思っている人は3割を切っています。つまり、まだまだ世の中の一般の方にとっては怖い病気で、がんを宣告されたら仕事を辞めて治療に専念しなければいけないと思っている人は多い状況です」と続けました。
最近のがん治療をめぐる状況(※)としては、 鏡視下手術 (内視鏡を用いた手術)などの普及で体への負担も少なくなり、入院期間は昔に比べて短くなっています。抗がん剤や放射線治療も現在は副作用をかなり抑えられるようになり、治療自体が外来にシフトしてきており、仕事に早期復帰することや治療をしながら働き続けることが可能になってきています。
もちろん、命を落としてしまう人やがんの症状や治療が思った以上にしんどくて泣く泣く仕事を辞めざるを得ない人もいます。人によってがんの状態やタイプはそれぞれ。だからこそ、大事なのは「イメージや昔の記憶に引きずられるのではなくて、がんについての最新の正しい情報を得ること」と若尾医師は力を込めます。
そして「仕事を辞めることはいつでもできるので、慌てて辞めるのだけはやめてほしい。どんな治療を受けて、予後はどうなのかわからない状態のうちに先回りして辞めるのだけは避けるべきだと思います。辞めることによって会社や健康保険組合からのサポートなどから切れてしまうし、社会とのつながりが切れることで孤独に陥ってしまう患者さんを何人も見てきました。まずは落ち着いて情報を集めることをおすすめします」と繰り返しました。
全国には国が指定するがん診療連携拠点病院などが461箇所あり、そこには必ず相談支援センターという相談窓口が設置されています。がん患者や家族はもちろん誰でも無料で匿名で相談でき、電話でも相談できます。「医師に聞けなかったことや『こんなことを聞いてもいいの?』ということも何でも聞けるのでぜひ活用してみてください」(若尾医師)
がんだけに限らない企業に求められていることは?
社員数が数千人の大企業では毎年のように何人かががんになって当たり前。数十人の中小企業でも誰がいつがんにかかっても不思議ではない「がんと生きる」ことが日常になった世界で、企業側に求められることはどんなことでしょうか?
企業側も「治療に専念してもらうために仕事を辞めたほうが本人のためにもいいのでは?」と先回りしたり、「戦力にならないから辞めてほしい」と考えたりしてがんによる離職を後押ししてしまうケースがあるようです。しかし、少子高齢化社会で人手不足と言われる中、業務に精通した貴重な人材を失ってしまうのは企業や社会にとっても損失です。
「通院のために有給休暇を半日や時間単位で取得できたり、通勤ラッシュを避けて時差出勤するだけで働き続けられる場合もあります。企業側が少しだけ柔軟に配慮することで貴重な人材を失わずに済みます」(若尾医師)
若尾医師によると、企業ががん対策に取り組むことは決してがん患者のためだけではないそう。
「働いている社員を大事にするということが基本。それはがんになった社員のためだけではなく周りのためでもあります。『病気になったらすぐに厄介払いされてしまう』ではなくて『病気になっても働き続けられる』と周りが思うことで、ほかの社員のモチベーションや士気が上がることにもつながります。がんだけではなくて、介護や子育てなどいろいろな事情を抱えている人たちのそれぞれの強みやスキルをいかに活かしていくか? ということにもつながり、令和の時代の企業や経営者に求められている経営課題だと思います」
がんになっても安心して働ける職場づくりに取り組むことは、さまざまな事情を抱えながら働く人たちがそれぞれの強みやスキルを活かしながら働くための環境づくりにもつながるといえそうです。
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