トランプ vs. ハリス 勝者ハリスの場合
1.気候変動対策や再生可能エネルギーの推進
ハリス氏が勝った場合は、トランプ氏の環境規制の話は正反対になる。ハリス氏はバイデン政権と同様に、気候変動対策や再生可能エネルギーの推進に積極的。これは、日本の再生可能エネルギー分野に関連する企業にとってプラス材料だ。特に、水素発電や火力発電所からのCO2回収・貯蔵などでビジネスチャンスがある。
電力部門ではテキサス州での再生エネルギー事業への参入が相次いでいる。電源開発(9513)、東京ガス(9531)などだ。関西電力(9503)も、最大級の陸上風力発電所のアビエータ陸上風力発電事業に出資、商業運転を開始している。太陽電池の素材分野では、日本板硝子(5202)が、太陽電池パネル用のガラスの生産能力増強を目的としてオハイオ州に新工場を建設し、すでに稼働している。
自動車分野では、トヨタ自動車(7203)が、2020年12月から燃料自動車MIRAIの次世代モデルの全米での販売を開始している。岩谷産業(8088)は、カリフォルニア州で水素ステーションを運営しているが、さらに水素ステーションの7ヵ所増設を発表し、トヨタがこの増設計画を支援する。
2.経済政策
さて今度はハリス氏の経済政策を見ていこう。具体的なものは、
・価格抑制策
・住宅政策
・児童/低所得層税控除
・医療費支援
の4つである。このうち、「ハリスノミクス」の目玉としたひとつが価格抑制策だ。食品の過度な値上げを禁止する法律をつくると表明した。インフレに伴う食品大手の値上げをけん制する狙いだ。
これは米国で事業展開する日本の食品メーカーにとって痛手になるだろう。たとえば日清食品HD(2897)は米国での価格改定で増収となり好業績を達成しているが、今後は不透明になる。
ハリス氏は住宅政策にも力を入れる。大統領の任期の4年間で300万戸の住宅建設を目指すとした。建設会社への税優遇を通じて若い世帯が最初に購入する安価な「スターター住宅」の建設を支援する。加えて、初めて持ち家を購入する人に、頭金2万5千ドルを支給する。これによって米国の住宅市場が活況となれば、塩ビ管の恩恵を受ける信越化学(4063)などが有望となる。
シンプルに住宅メーカーでは住友林業(1911)と大和ハウス(1925)。住友林業は2003年から米国での戸建て事業をおこなっており、大和ハウスは1980年代に一度撤退したが2011年に再進出した。両社とも米国で広く普及している「2×4(ツーバイフォー)工法」の木造住宅で事業を拡大している。そこに積水ハウス(1928)も加わる。2024年4月に米大手ハウスビルダーのM.D.C.ホールディングスを約49億ドルで買収、日本勢では先行する住友林業を抜いて米国5位に躍り出る。