日本の「生活水準」は低いのか?
さて、順位が変わりつつも経済大国であることに変わりはない日本ですが、国民の生活水準を表わすGDPを人口で割った「一人当たりGDP」の順位もみておきましょう。
IMFの同データベースでは2022年の日本の一人当たりGDP(名目、ドル建て)は世界第32位の3万3854ドルでしたが、2023年(3万3950ドル)は第34位に下落すると予測されています。PPP換算でみても、2022年と2023年の日本はいずれも36位で、高い水準とは言えません。
日本の経済規模を示すGDPは世界トップクラスであるにもかかわらず、なぜ一人当たりGDPとなると、このような水準になってしまうのでしょうか。
2023年の一人当たりGDP(名目、ドル建て)の世界ランキングをみてみると、トップはルクセンブルク、次いでアイルランド、スイスが続きます。これらの国を含め上位にランクインしている多くの国の共通点の一つは、人口が比較的少ないところです。
なかでも、ルクセンブルクやスイスは労働人口に占める越境労働者の割合が大きく、多くの付加価値を生み出している割に人口が少ないためGDPを一人当たりに換算すると値が大きくなってくるのです。逆に、名目GDPが世界第2位の中国の一人当たりGDPは第75位でした。
この点を考えれば、日本の一人当たりGDPの順位が上位でない一因は人口の多さと言えそうです。しかし、一人当たりGDPが上位の国のなかには、人口が少ないなかで有力な金融機関の集積地である国や、競争力が高い国、IT導入などによる効率化で生産性が高い国がみられます。
加えて、人口が日本の2倍以上であるアメリカの一人当たりGDPの順位は第7位と高順位であることも考えると、人口の多さではなく、根本的な原因は生産性の問題などほかにもあると言えるかもしれません。
このように、各種GDPはその国・地域の特徴やその時の経済環境などによって傾向が全く異なるものになり得ます。特に国際比較をする場合は、一つの視点にしぼらずに、さまざまな視点から分析することが必要と言えます。
今回、日本の経済規模の位置付けが低下したのは一時的とみられる要因によって起こったと考えられます。しかし、実質GDPの成長率をみると、日本が長い間高い成長を遂げていない状況は確かであり、それも一つの要因ではないでしょうか。
実際、同じIMFの予測では、日本は2026年に年々著しい成長をみせているインドにも抜かれて、第5位になる見通しとなっています(図表)。日本の経済成長率が高まらなければ、今後はこういった新興各国にも抜かれていくでしょう。
日本が国際的地位を保つためにも、生産性の向上やイノベーション、競争力向上につながる施策など中長期的に経済成長を高める対策が求められています。
帝国データバンク情報統括部
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