退職金での完済は老後破産につながる
家の購入時、自分の残りの勤務期間が35年もないのに、ローンを組む最長期間の35年のシミュレーションで計算されてしまうことは、よくあることです。それは、毎月の住宅ローン返済額の負担が少なく見えるため、買主の心理的ハードルが下がるうえ、金融機関の審査に通りやすくなるためです。
「60歳または65歳で定年したときに住宅ローンの残高がいくらになるか」は必ず把握しておくべきだというお話は前述の通りです。その金額を定年時までに繰り上げ返済しないと、収入が安定している現役時代に住宅ローンが終わりません。
そこで、「親が退職金でローンを完済したから、自分も退職金で払えばいい」と思う人もいるかと思いますが、それも非常に危険な考え方です。
親世代は景気も良く、定年までひとつの企業で働き続ければ、老後の生活は保障されていました。多くの企業が退職金をきちんと支払い、老後の年金も潤沢に支払われていました。しかし、景気は悪くなり、企業に余力はなくなっているうえ、少子高齢化は進み、今後、年金の支給額が上がることはないでしょう。
親と同じようなマネープランを考えているようなら、今すぐに考えを改めましょう。退職金は住宅ローン返済額として考えず、老後資金に充てるようにすることがベターです。
千日 太郎
オフィス千日(同)代表社員
公認会計士
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