先物を投資対象とし、100%コンピューター・プログラムで運用するトレンド・フォロー型のヘッジファンド「マネージド・フューチャーズ」。今回は、その透明性・流動性など、活用時の留意点を中心に見ていきます。

一般のファンドに比べて高いコスト負担が求められる

第13回で見たよう、大手マネージド・フューチャーズ(BIG4と呼ばれる「マン」「ウィントン」「ブルートレンド」「トランストレンド」の大手4ファンドがあります)の大半は、投資可能な最低金額がかなり高く設定されているため、一般の方にとってはハードルが高いといえるでしょう。

 

ただし、一般のヘッジファンドでよく指摘される透明性の低さに関しては、さほど心配はありません。まず、マネージド・フューチャーズは欧州の金融当局の管理下にあり、手口の公開義務を課されています。さらに、投資先は株式指数や商品指数といった先物で、これらは一般の個人投資家ですら投資できる、極めて流動性と透明性の高い市場です。そのため、透明性はむしろ高いといってもいいのです。

 

よくいわれるヘッジファンドの欠点として、流動性の低さもあります。たとえば、リーマン・ショックの直後に、多くのヘッジファンドは投資家からの解約請求に応じることができず、償還停止状態になりました。しかし、マネージド・フューチャーズに関しては、解約停止を行ったファンドを知りません。

 

ヘッジファンドが解約停止状態になった理由は二つあります。

 

一つは、投資先があまりに複雑で、しかもリーマン・ショックの影響でその価値が急落したこと。つまり、投資家に返すお金そのものがなくなってしまったのです。

 

二つ目の理由は、レバレッジのかけすぎです。投資家から集めた資金を、さらに銀行などから借り入れた資金で数倍に膨らました上で運用していたため、投資対象のわずかな下落で大きな損失を計上したわけです。

 

これに対してマネージド・フューチャーズは、基本的にレバレッジをかけません。そればかりか、投資家から集めたお金の大半を銀行に預託し、おもに短期国債など流動性の高い資産で運用しています。

 

その一方、ファンドによって違いますが、一般的に20%程度のお金を証券会社に差し入れ、先物市場で証拠金取引を行っているわけです。投資家が解約請求をした場合、銀行預託部分から支払えるため、解約停止は起こりにくいといえるでしょう。

 

ただし、相場のトレンドがはっきりしているときに利益を出しやすく、トレンドのない凪のような相場になったとき、成績が低迷する傾向にあります。それを考えると、ポートフォリオの大部分をマネージド・フューチャーズが占めるというのもまた、当然のことながらリスクが高いといえます。

 

さらに保有手数料の点でも注意が必要です。おおむね3〜5%程度の高い購入手数料や、運用成果に対して20%程度の成功報酬を設定するなど、一般のファンドに比べ高いコスト負担を求められることにもなります。

 

解約しづらい点にも注意が必要です。最近は週一度のタイミングで解約できるものも増えてきましたが、月一度しか解約できないファンドもあります、この場合、解約申し出のタイミングによっては、現金が戻るまで3カ月程度かかる場合もあります。

投資家はファンド側からの直接購入はできない

●買うタイミング
ヘッジファンドの場合、常に一定の利益を目指しているという性質上、特に買いどきはありません。投資家が買いやすいタイミングで買うのが一番です。

 

●どこで買えばいい?
マネージド・フューチャーズは、おもに英国など海外の会社が運用しています。購入する場合、運用会社と投資家が直接契約することになりますが、一般にファンド側は投資家からの直接的な連絡を受けません。

 

日本から投資する場合、たとえばシンガポールや香港などのエージェントのサポートを受け、購入するのが一般的です。自分で銘柄を選ぶことができなければ、信頼できる投資助言会社を見つけ、投資助言契約を結ぶとよいでしょう。金融庁に正式に登録した投資助言会社は、その助言行為の中で顧客のポートフォリオを設計します。

 

そこにマネージド・フューチャーズを組み込むことは、助言業者の行為として認められていますが、購入の仲介や勧誘は違法です。投資家側としても、このような法律の仕組みを理解した上で、購入すべきか否か検討してください。

 

スイスなどのプライベート・バンクに口座を持っていれば、そこからたとえばBIG4と呼ばれる大手マネージド・フューチャーズも購入することができます。一般にこれらのファンドの最低投資額は約1億円と高額ですが、プライベート・バンク経由で投資する場合、約1000万円程度と、比較的小口で購入することもできます。すでに口座をお持ちであれば、一度検討してみてもよいでしょう。

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    本連載は、2013年12月19日刊行の書籍『日本が財政破綻しても資産を奪われない10の投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    田中 徹郎

    幻冬舎メディアコンサルティング

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