日経平均株価「史上最大の暴落」は「秋からはじまる株価上昇」の予兆!?…今後の日本株式に期待できるこれだけの根拠【経済の専門家が解説】

日経平均株価「史上最大の暴落」は「秋からはじまる株価上昇」の予兆!?…今後の日本株式に期待できるこれだけの根拠【経済の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

8月5日に起きた日経平均株価の「史上最大の下落」は、マーケットを驚かせました。値動きの荒くなった株式相場に対して「いまは投資を控えるべきか」と迷っている人も少なくないでしょう。しかし、この大暴落が、実は「今秋から来年への株価上昇の跳躍台」となるかもしれないのです。いったいどういうことか、株式会社武者リサーチの武者陵司氏が詳しく解説します。

株価に逆風?「円高」が進行する可能性は

④円高の天井も見えた

以下4つの要因により円高が進行する可能性は低いだろう。円は160~145円のレンジの中で安定していくのではないか。

 

第1に、今後日米金利差の縮小はあまり見込めない。日銀の利上げが遠のき、米国の利下げが限定的になるとすれば、日米金利差の縮小は緩慢になる。むしろ日本の株安と日銀の利上げ封印で米国以上に日本の長期金利が低下している。

 

金利差縮小は一服したと言える状況である。[図表4]に見るように金利差の縮小(長期・短期・名目・実質のすべてにおいて)は、すでに1年前から始まっており、為替決定要因としての日米金利差は重要性を失っていくのではないだろうか。

 

出所:ブルームバーグ、武者リサーチ
[図表4]ドル円レートと日米金利差(長期・短期・名目・実質) 出所:ブルームバーグ、武者リサーチ

 

第2に、投機の円高も続きにくいと思われる。シカゴマーカンタイル取引所のIMM通貨先物ポジションを見ると、円のネットショートポジションは6月末に過去最高の184,000枚に積みあがったが、8月9日には11,000枚と、10分の1以下に縮小しており、1ヵ月で円ショートの投機ポジションがほぼすべて解消されたことを物語る。

 

それでは今後円ロングの積み上げがなされるかというと、それはなさそうである。[図表5]に見るように、過去円のネットロングポジションが積みあがったのは、リーマンショック・ギリシャ通貨危機時(2008~2012年)、2015~6年のチャイナショック時、2020年のコロナショック時など金融不安が高まった時だけであった。米国経済堅調となれば、むしろ円ショートポジションが再度積み上げられる場面があるかもしれない。

 

出所:ブルームバーグ、武者リサーチ
[図表5]ドル円レートとIMMネット円ポジション(ノンコマーシャル) 出所:ブルームバーグ、武者リサーチ

 

第3に、日米の好対照のポリシーミックスは明確にドル高円安を志向している。そもそも拡張的財政政策とタイトな金融政策は通貨高に、緊縮的財政政策とルーズな金融政策は通貨安になるという経済学仮説(マンデル・フレミングモデル)に基づけば、米国は典型的通貨高のポリシーミックス、日本は典型的通貨安のポリシーミックスを採っていることになる。

 

円安インフレにより政府の税収が大きく膨れ上がっている。政府はプライマリーバランスが2025年度に黒字になるとの試算をまとめたが、それは2023年の-5.2%(OECD2023年11月)からの鋭角的回復になる。それは逆から見れば財政が2024~2025年にかけて民間需要を年間2.6%押し下げるということを意味する。

 

円安インフレは家計から実質所得の減少という形で所得を奪っているが、政府には巨額の所得移転をもたらしているのである。日本政府が税収増をため込みプライマリーバランスの黒字化を達成するということは、財政緊縮度を強め強烈な円安圧力を保持し続けるということに外ならない。円安を止めるには財政緊縮路線の大転換が必要、それが始まるまでは、円安基調は大きく変われないと考えられる。

 

第4に、市場での円先安観は7月以降の円高場面においてもほとんど損なわれていない。市場の円先安観は金利差を上回る為替ヘッジコストによって推測できるが、[図表6]に見るように、日本円だけが突出して高い状態がほぼ2年にわたって続き、今もまったく変わっていないのである。

 

出所:ブルームバーグ、武者リサーチ
[図表6]円・ユーロの金利差と為替ヘッジコスト差(=市場が予想する為替変化)の推移 出所:ブルームバーグ、武者リサーチ

 

日本円の対ドルヘッジコストは2022年初めまで、ユ―ロなどの他通貨とほぼ同じで0%台であったが、2022年末にほぼ5%へと急上昇し、現在も5~6%と異常な高水準で推移している。日本円に対してだけ為替ヘッジコストが異常に高くなったため、日本の投資家が為替ヘッジをして米国国債投資をすれば、2~2.5%の損失となる状態が2年以上にわたって続いている。

 

この円の日米金利差を上回る対ドルヘッジコストは2022年春先からの円安の急進展とともに急上昇し、それ以降金利差を2~2.5%上回って推移している。それは市場が年間2~2.5%の円安を想定していると理解できる。

 

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※本記事は、武者リサーチが2024年8月14日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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