92歳父のもとで「牢屋」に閉じ込められる…かつては月収40万円も、リーマンショックで失業。53歳現在は「手取り月10万円」で施設拒否の父を介護する、独身娘の絶望【社会学者が解説】

92歳父のもとで「牢屋」に閉じ込められる…かつては月収40万円も、リーマンショックで失業。53歳現在は「手取り月10万円」で施設拒否の父を介護する、独身娘の絶望【社会学者が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

若者期と高齢期に挟まれた35歳から64歳のミドル期シングルが増加しています。家庭を持つきょうだいに比べ、押し付けやすいせいか、ミドル期シングルは高齢親の介護を担うケースも多くみられ……。本記事では、宮本みち子・大江守之編著、丸山洋平・松本奈何・酒井計史著「東京ミドル期シングルの衝撃」(東洋経済新報社)から一部抜粋・編集して、介護担当が「嫁」から「おひとり様」へと移行した現状を紐解いていきます。

53歳・非正規女性、横浜と北海道を往復介護

きょうだい数が減少する中で、親の介護を誰が引き受けるかは、ますます大きな課題になっているのですが、介護がシングルの暮らしを蝕む例も出てきます。その例としてNHKスペシャル取材班が紹介している女性の例をみてみましょう(NHKスペシャル取材班[2020])。

 

横浜市のシェアハウスに住む53歳の原真由美さん(仮名)は、非正規雇用の仕事をつなぎながら、北海道の過疎地にひとりで住む父親の世話のために3か月に1回、1週間から10日ほど通っています。そのために2、3か月の短期契約の仕事を探し転々とすることになりました。月の手取り収入は10万円ほどです。

 

「待遇のいい仕事が見つかるっていう気がしないですね。50代という年齢も年齢だし、『自分の能力を発揮できることって、この世の中にある?』って考えても、見つかる気がしないです。50を過ぎちゃうと、なにか普通に(人生が)下り坂だと思ってしまいます」

 

20代の頃、原さんは外資系の証券会社の派遣社員として、多いときには月収が40万円になることもありました。その生活が劇的に変わることになったのは、派遣の仕事が45歳で契約更新されなかったとき。リーマンショックによる派遣切りでした。その後、バブル崩壊後の長引く景気低迷の中、職を転々としてきました。

 

ところが3年前故郷に住む母親が突然亡くなり、92歳の父親がひとり残されたのです。親戚は独身の原さんに世話を押しつけました。原さんは義務感で父親のもとに通いつめています。

 

「でも、ずっと自分ができるのかというと、できない」

 

しかし父親は施設に入ることをかたくなに拒否しています。実家に滞在していると恐怖が襲ってくるといいます。

 

「ここにいると、自分が牢屋に閉じ込められているような気持ちになるんです。私、車の免許もないし、自由にどこかに出かけることもできないし、なにか父のもとで、とらわれの身という自分の姿を思ってしまいます」

 

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※本記事は「東京ミドル期シングルの衝撃」(東洋経済新報社)を一部抜粋・編集したものです。

東京ミドル期シングルの衝撃

東京ミドル期シングルの衝撃

宮本 みち子、丸山 洋平

東洋経済新報社

未婚率全国トップの東京23区で進む「日本の未来」とは。 孤独担当大臣も知らない、35歳から64歳の「都市型」孤独に焦点を当てる。 高齢者のひとり暮らしが増加していることは誰でも知っている。その現象は公私ともに対応が…

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