53歳・非正規女性、横浜と北海道を往復介護
きょうだい数が減少する中で、親の介護を誰が引き受けるかは、ますます大きな課題になっているのですが、介護がシングルの暮らしを蝕む例も出てきます。その例としてNHKスペシャル取材班が紹介している女性の例をみてみましょう(NHKスペシャル取材班[2020])。
横浜市のシェアハウスに住む53歳の原真由美さん(仮名)は、非正規雇用の仕事をつなぎながら、北海道の過疎地にひとりで住む父親の世話のために3か月に1回、1週間から10日ほど通っています。そのために2、3か月の短期契約の仕事を探し転々とすることになりました。月の手取り収入は10万円ほどです。
「待遇のいい仕事が見つかるっていう気がしないですね。50代という年齢も年齢だし、『自分の能力を発揮できることって、この世の中にある?』って考えても、見つかる気がしないです。50を過ぎちゃうと、なにか普通に(人生が)下り坂だと思ってしまいます」。
20代の頃、原さんは外資系の証券会社の派遣社員として、多いときには月収が40万円になることもありました。その生活が劇的に変わることになったのは、派遣の仕事が45歳で契約更新されなかったとき。リーマンショックによる派遣切りでした。その後、バブル崩壊後の長引く景気低迷の中、職を転々としてきました。
ところが3年前故郷に住む母親が突然亡くなり、92歳の父親がひとり残されたのです。親戚は独身の原さんに世話を押しつけました。原さんは義務感で父親のもとに通いつめています。
「でも、ずっと自分ができるのかというと、できない」。
しかし父親は施設に入ることをかたくなに拒否しています。実家に滞在していると恐怖が襲ってくるといいます。
「ここにいると、自分が牢屋に閉じ込められているような気持ちになるんです。私、車の免許もないし、自由にどこかに出かけることもできないし、なにか父のもとで、とらわれの身という自分の姿を思ってしまいます」。
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