(※画像はイメージです/PIXTA)

若者期と高齢期に挟まれた35歳から64歳のミドル期のひとり暮らしが増加しています。シングル化の傾向は日本全土で強まっていますが、特に東京区部で卓越して進行しています。その背景には就職・進学など不安定な事情による人口移動との連関や、家族形成の変化がありました。本記事は、宮本みち子・大江守之編著、丸山洋平・松本奈何・酒井計史著『東京ミドル期シングルの衝撃』(東洋経済新報社)から一部抜粋・編集して、ミドル期シングル人口が高まる東京の変容について解説します。

ミドルシングルの国:東京の未来

 

将来的に家族を持たず、社会的に孤立しやすいミドル期シングルのさらなる増加は確実であり、その一部は非正規雇用による不安定な経済状況に置かれ、新たなアンダークラスを形成する可能性があります。

 

新宿区はミドル期シングルの生活実態を調査し、それに基づいて経済的安定度と社会的孤立リスクの高低によってシングルを4つに分類する視点を提示しているのですが(新宿区新宿自治創造研究所[2016])、そのうち「生活不安群」は経済的安定度と社会的孤立リスクの一方が低く、もう一方が高い分類であり、一見すると生活に支障がないように見えて潜在的なリスクを有しており、何かのきっかけでたやすく両方の要素が低い「生活困窮群」に移行してしまう恐れがあります。

 

将来的に増加が確実視されるミドル期シングルの多くが生活不安群となり、薄氷の生活を送る者が集住する場へと東京区部は変わっていくのかもしれません。ただし、東京区部あるいは東京都のミドル期シングルは、東京圏外出身者よりも東京圏内出身者が多くなってきており、将来的な増加も後者を中心とするものとなると考えられます。

 

これは従前と比較すると、親との地理的な距離の近いミドル期シングルが増加するということを意味するため、マクロ的にみて社会的孤立リスクが今よりも低下することにつながるかもしれません。また、ミドル期および高齢シングルが増加することをポジティブに捉え、シングル向けの各種サービスを官民共同で創設することができれば、東京区部がシングルフレンドリーな場になる可能性もあるでしょう。

 

結婚を選択せず、積極的にシングルであることを選択する自由を享受できる場となれば、その成立過程で多様性を深く広く許容する社会になっていくでしょうし、それがさらなる東京圏内出身者のシングル化、東京圏外出身のシングルの転入の増加につながるかもしれません。いずれにせよミドル期シングルが増加していくことは確実であり、東京区部は常にシングルがもたらす新たな社会課題に対する答えを模索する場となっていくと思われます。

 

 

丸山 洋平

札幌市立大学 デザイン学部准教授

地域人口学者

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※本記事は「東京ミドル期シングルの衝撃」(東洋経済新報社)を一部抜粋・編集したものです。

東京ミドル期シングルの衝撃

東京ミドル期シングルの衝撃

宮本 みち子、丸山 洋平

東洋経済新報社

未婚率全国トップの東京23区で進む「日本の未来」とは。 孤独担当大臣も知らない、35歳から64歳の「都市型」孤独に焦点を当てる。 高齢者のひとり暮らしが増加していることは誰でも知っている。その現象は公私ともに対応が…

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