(写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍以降、世界的に人手不足感が強まり、またロシアのウクライナ侵攻をきっかけにした商品価格の上昇が発生するなど、インフレ圧力が目立つなかで、賃金動向への注目度も高まっている。日本では、バブル崩壊以降、コロナ禍前までデフレ懸念が根強かったこともあり、足もとのインフレ圧力が賃金と物価の好循環を生み出すのではないか、また、「好」循環を実現するためにはインフレ率を超える実質賃金の上昇が不可欠、といった議論もなされている。そこでニッセイ基礎研究所の高山武士氏が、日本の実質賃金の推移を他国と比較して、その違いや特徴を整理した。分析対象国は日本以外に、米国と欧州の主要国(英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン)とし、分析期間はユーロが発足して以降の約25年間の賃金推移に焦点をあてている。

時間あたり実質賃金上昇率

ここまで、1人あたりの賃金や生産性を見てきたが、労働時間を加味した時間あたりの実質賃金を確認すると(図表1下段、図表3)、時間あたり実質賃金は、1人あたりの実質賃金と比較して全体的にやや押し上げられている。これは、今回の分析対象国に共通して労働時間の減少が見られるためである。

 

 

 

なかでも日本の労働時間の低下幅は大きく、その結果、時間当たり実質賃金が25年で9.8%増加しているにもかかわらず、一人当たり実質賃金は2.0%減少している。日本では、同じ年齢層でみた1人あたりの労働時間が全体的に減っているほか、少子高齢化によって相対的に労働時間の長い男性中核層(25-64才)の労働者が減少し、労働時間の短い高齢の労働者が増えていることが就業者の合計労働時間(延労働時間)を押し下げる要因となっている。日本では、女性や高齢者の労働参加率が上昇し、就業者数の押し上げ要因になってきたため、就業者全体でみると、女性や高齢者の労働参加率上昇は合計労働時間の押し上げ要因にもなるが、全体で見た延労働時間は押し下げ圧力の方が強く、減少傾向にある(図表4)

 

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2024年8月7日に公開したレポートを転載したものです。

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