ベストな選択は「Stay in the market」
さて、名古屋のセミナーのクロージング・リマークスで述べた言葉をここに記して、今回のレポートを終えることにしたい。真夏の激震を体験した、今週のレポートの締めにふさわしいと思う(こんなことを半月前のセミナーで述べていたことに我ながら驚く)。
僕の朝一番の講演からこのパネルまで、ずっと共通してるテーマは「株は上がるもの」だということです。基本的には上がっていくと。ただ、時に上がり過ぎるため、そういったバブルのときは売らなければいけないし、もちろん急落局面も何回もあるでしょう。しかし、基本的にはバイ・アンド・ホールドで持ち続けていくのが一番。個人投資家の方は決算期などを気にせず時間を味方につけて資産形成できる。個人投資家には(バイ・アンド・ホールドが)ベストな方法だろうと思います。
ただ、やはり気をしっかり持つためには(「急落にも動じずに持ち続けるには」という意味)、あらゆるリスクを把握するということが重要です。
僕は日銀が国債買い入れをやめることが、結構大きい波紋を呼ぶだろうと思います。その影響が今後じわじわじわじわ出てくるでしょう。「クラウディングアウト」の問題や、思わぬ金利上昇、マネーの奪い合いになって預金が取れない銀行の破綻、シリコンバレーバンクの破綻と同じようなことが日本の弱小金融機関で起きてくる。ゾンビ企業が簡単に潰れてしまう。
そういう変化の時代をね、これから迎えるわけです。当然、金融市場にも少なからずショックが走ります。しかし基本的には日本の上場企業は大丈夫でしょう。一時的なショックに狼狽売りとかせずマーケットから逃げ出さず、岡元(マネックス証券、チーフ・外国株コンサルタントの岡元兵八郎氏)がいつも言っている「マーケットにステイし続ける」 それがやっぱりベストな選択だろうと思います。
最後にもう一度、投資家のみなさんへメッセージを伝えよう。
Stay in the market――市場から退出しないということだ。ポジションは落としていい。リスクが高い局面では、むしろ、そうするべきだ。ただし、それは運用をやめるということではない。再びエントリーするための様子見だ。休むも相場である。そして、そうしたほうがよい根拠のふたつめが、ここに挙げた「二番底に注意」である。
激震の1週間は8月9日で終わった。しかし、相場も地震と同じで一度、大きな揺れが来ると、その余震がしばらく続くものである。場合によっては、再び大きく下値を探る展開もあり得るだろう。激震の夏。激震は終わったかもしれないが、夏はまだ終わらない。しかし、夏が終わらないほうがずっといい。その逆――夏が終わっても激震が終わらないよりは、何百倍もいいだろう。
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト 執行役員
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