「よし、ラーメン店を開いて一発逆転だ!」→失敗。お金に困っているときに手を出したビジネスほどうまくいかないワケ【心理学者が解説】

「よし、ラーメン店を開いて一発逆転だ!」→失敗。お金に困っているときに手を出したビジネスほどうまくいかないワケ【心理学者が解説】
写真はイメージです/PIXTA

お金に困っているときほど、「何とか稼ぐ方法はないものか?」と思い、いろいろなことに手を出して時にはおかしなビジネスを始めてしまう……というのはあるあるなのかもしれません。内藤誼人氏の著書『すごく使える社会心理学テクニック』(日本実業出版社)より一部を抜粋し、お金をめぐる心理学について見ていきましょう。

株予想的中で大儲け!?一筋縄ではいかない株式投資のリアル

ハーバード大学のジョン・パウンドは、あるときにとても興味深い仮説を思いつきました。だいたいどんな業界の、どんな企業であれ、「合併後には企業の株価は急上昇する」という一般的な傾向があるのですから、買収が取りざたされている企業の株を買っておいて、合併後に売るようにすれば、大儲けできるのではないかと考えたわけです。

 

たしかにこの考えは理にかなっているように思えます。

 

そこでさっそくパウンドは、「ウォール・ストリート・ジャーナル」誌で買収の噂のある企業について、その噂で売買している投資家の成績について調べてみたのです。

 

すると残念なことがわかりました。

 

噂をもとに売買した投資家は、代表的な銘柄の売買をしている投資家よりも、得られる利益は少なかったのです。

 

合併の噂話に頼って株を売ったり買ったりするのは、あまりやらないほうがいいみたいですね。

 

株の予想というものは、そんなに簡単にはいかないのです。

 

せっかくですので、もうひとつ、別の研究もご紹介しておきましょう。

 

2007年8月から2009年6月までの「USAトゥデイ」誌の毎週月曜日の巻頭記事で、経済の先行きをどう予想するのかを調べてみました。

 

その結果、「アメリカ経済はこれからよくなる」というポジティブな観測記事が出ると、翌週、そして5週後の株価は、むしろ「下がる」ということがわかりました。

 

投資家は疑り深いので、「これからよくなる」と言われると、逆に「悪くなる前兆では?」と思うのでしょうか。

 

またセヴィンサーは、アメリカの大統領就任演説についても調べてみたのですが、大統領が経済の先行きに好ましいことを言えば言うほど、その後のGDPと失業率の指標は逆に悪くなるという傾向についても明らかにしています。

 

株で大儲けしたいと思う人は多いと思うのですが、その予想はなかなか一筋縄ではいかないと考えたほうがいいのかもしれません。

 

簡単に株で大儲けしようとするよりは、やはり真面目に働いたほうがお金持ちになれると思うのですが、いかがでしょうか。

お金に余裕がないと、頭も働かない!? 

お金に困っていると、そのことばかりが気になります。

 

「生活は、大丈夫だろうか?」

 

「家族を養っていけるのだろうか?」

 

「貯金もできずに、老後はどうすればいいのだろうか?」

 

そういう心配のほうに気をとられるので、そのほかのことについては頭が回らなくなります。

 

英国ウォーリック大学のアナンディ・マニは、464名のサトウキビ農家にお願いして、収穫前と、収穫後に2回、知能テストを受けてもらいました。また、脳トレのような作業もしてもらいました。

 

収穫前の農家は、お金を使い果たしていて、余裕がない状態です。収穫後には、お金が入ってきて裕福な状態です。

 

調べてみると、収穫前の農家は、知能テストでも、認知的な働きを測定する脳トレの作業でも、非常に成績が悪くなりました。資金繰りのことで頭を悩ませている状態では、そちらにメンタル力を奪われるので、その他のことなどできないのです。

 

収穫後になって、懐が暖かくなりますと、余計な心配もなくなるので、頭の働きもよくなるのです。

 

私たちは、会社をクビになったり、お金に困ってくると、「何か儲かる仕事を考えなければ」と思うものですが、そういう状態では、残念ながら頭はうまく回りません。いきなり、おかしなビジネスを始めてしまって、踏んだり蹴ったりの思いをするのです。

 

だれも思いつかないような新しいビジネスを考えたりするのは、ある程度、お金に余裕があるときのほうがいいですよ。

 

お金に余裕があるときのほうが、頭の回転はよくなるのですから。

 

お金に困っているときには、どうしても近視眼的になってしまい、さまざまな観点から物事を考えたりできなくないます。そういうときには、なにもしないでじっとしているのが正解です。思いつきでなんの準備もなく仕事を始めても、どうせ失敗するに決まっています。

 

お金があるときに、お金がないときのことを思い出してもらうと、「あのときには、どうして、あんなにバカげたことをしようとしたのだろうか」と思う人も多いのではないでしょうか。

 

なんのノウハウもないのに、いきなりラーメン屋さんになろうとしたり、慣れない株に手を出そうとしたりするのも、お金がないときです。

 

私たちは、お金に余裕のないときは理性的に物事を考えられず、「そんなことは絶対にうまくいかない」ということに思いが及ばないのでしょう。

 

お金がないときには、新しいことを考えないほうがいいと思います。

 

しっかりと守りに入って、おかしなことをしないようにしましょう。

 

 

内藤 誼人

心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表

慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、心理学の応用に力を注ぎ、ビジネスを中心とした実践的なアドバイスに定評がある。『心理学BEST100』(総合法令出版)、『人も自分も操れる! 暗示大全』(すばる舎)、『気にしない習慣』(明日香出版社)、『人に好かれる最強の心理学』(青春出版社)など、著書多数。

 

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本連載は、内藤誼人氏の書籍『すごく使える社会心理学テクニック』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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