高いランニングコストを支払い続けなくてはならない
特にメンテナンス代が高いと言われるのは、プールやスパなどの水を使う施設で、水道代がかかるうえに定期的な清掃代、水温を一定に保つための電気代などで、年間数千万円ものコストがかかっているケースもあります。
このような共用施設をフル活用するなら、コストが高くても元は取れるかもしれませんが、ありがちなのは結局使わなくなるパターンです。最初は魅力的だと思ったプールやジムも、時間がなくてなかなか行けない、という人は多いもの。入居時に小さな子どもがいて、キッズルームが便利だと感じていたとしても、子どもが成長すれば必然的に足を運ばなくなります。
使わなくなっても設備がある限りはコストがかかり、そのコストはすべての住民が、利用頻度に関係なく分担することになります。
国土交通省の調査によると、マンションの管理費の全国平均は1㎡あたり200円程度が相場で、東京都区部に限って言うと、全国平均より1割ほど高くなります。
これに対し、共用施設の充実しているタワマンの管理費は1㎡あたり300円を超える場合が多く、なかには350円を超える物件も。管理費は原則として「専有部分の床面積割合」に応じて負担する金額が決まるので、専有部分が70㎡だとしたら、管理費だけで2万4,500円。これに修繕積立金が上乗せされれば、月々のランニングコストだけで3万〜4万円もかかってしまいます。
マンションによっては、後々になって「金食い虫」の共用施設の見直しを行っているところもあります。
たとえば、ファミリー向けマンションの場合、一次取得者層は小さな子どもがいる世帯が多いので、新築間もない頃にはキッズルームが大賑わい。しかし、10年も経つとその子どもたちはキッズルームに足を運ぶ年齢ではなくなったため、キッズルームをスタディルームに作り替えた事例があります。
また、国土交通省では一定の規模以上の建築物について、駐車場の附置義務を課しているため、大規模マンションには必ず駐車場があります。都心部の場合、機械式駐車場を設置しているケースが多いのですが、維持・管理費用は非常に高額。車離れの加速で利用者が減り、駐車場利用料の収入が減っているマンションも増えています。そのため、住民が総会で話し合った結果、機械式駐車場の埋め戻しという思い切った選択をした事例も。
豪華な共用施設は物件の目玉であり、資産性を高める役割も担っています。そのような施設が売りのマンションを検討する場合は、高いランニングコストを支払い続けることができるのか、よく考える必要があるでしょう。
長嶋 修
さくら事務所 会長
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