(※写真はイメージです/PIXTA)

最愛の伴侶を失うことによるダメージは、思っているよりも非常に根深いものです。さらに、そのような人たちの悲しみに、日本の年金制度が追い打ちをかけているという声も。一体なにが問題なのでしょうか? 本記事では、Aさんの事例とともに遺族年金の仕組みとその対策方法について、合同会社エミタメの代表を務めるFPの三原由紀氏が解説します。

遺族厚生年金の男女差に憤然するも…後の祭り

実はAさんの絶望感を深めた要因のひとつには遺族年金制度の理不尽ともいえる仕組みもあったようです。

 

B代さん亡きあとの手続きで、Aさんは遺族年金の請求を行うため年金事務所に足を運びました。B代さんは、就職してから26年間に渡り厚生年金保険料を納め続けてきたのですから、遺族になんらかの給付があるはずと思っていました。しかし、Aさんに遺族年金を受け取る権利はないと聞かされ「そんな……。これでは払い損じゃないか」と憤りを感じたのです。

 

ここで現在の遺族年金制度の仕組みを簡単に説明しておきましょう。遺族年金は公的年金の加入者が死亡したときに、死亡者と生計維持関係がある遺族が受け取ることができる年金です。生計維持関係とは、生計を同じくしていること、収入要件を満たしていること(前年の収入が850万円未満、または、所得が655万5,000円未満である)です。

 

つまりAさんの年収1,100万円では収入要件を満たさないため、遺族年金を一銭も受け取れないのです。では、Aさんの年収が下がった場合、遺族年金を受け取れるようになるのでしょうか?

 

仮にAさんが無収入になった場合でも遺族年金を受け取ることはできません。正確にいうと、遺族年金には2つの年金、遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。厚生年金に加入していた妻が亡くなり、かつ、子ども(18歳未満、あるいは20歳未満で障害年金を受け取っている)がいない場合、夫が受け取る年金は遺族厚生年金のみになります。

 

特筆すべきことは、遺族厚生年金を受け取る条件の男女差です。Aさん、つまり妻を亡くした夫の場合、対象は夫の年齢が55歳以上、60歳からの受給開始になります。Aさんは妻死亡時に49歳でしたから遺族厚生年金の対象外となり一銭も受け取れなかったのです。

 

これは、年金制度の設計が「夫が働き、妻を扶養する」といった昭和的な社会経済状況のもとで行われているため、実情に合わなくなっているといわざるを得ません。

 

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