数珠や水でボロ儲けするカラクリ
この記事では、搾取ビジネスの具体例をあげてみます。僕は行政書士として、これまで1000人を超える経営者の相談に乗り、1500以上の事業創出を支援してきました。その中で、搾取ビジネスの見極めを指導したり、反対に搾取ビジネスにならないよう軌道修正を助言したりしてきました。
それらの経験からお話しできる範囲の事例を、いくつかお伝えしていきます。人はとにかく悩んでいるときに思考停止に陥り、権威性のあるものにすがってしまう傾向にあります。
それを見越して「願いが叶う」「悩みが解消される」ことなどを前面に出したブレスレットや数珠を使ったビジネスがあります。これは、その点が上手に利用されています。ブレスレットや数珠は、宝石の類を組み合わせて、様々なバリエーションの商品がつくれます。
デザイン的にもすぐれ、それぞれの組み合わせで、様々な意味づけ(ご利益)を与えることも可能です。少しマーケティング寄りの表現をすれば、ターゲットごとのニーズにあった価値提供がしやすいわけです。
標準的なブレスレットや数珠に用いられる宝石は数十円から数百円です。だいたい20個から30個組み合わせて、数十円のポリウレタンゴム紐で括れば完成します。慣れれば10分程度でつくれますし、コストも安ければ1000円もかかりません。
ですから、ブレスレットや数珠は高くてせいぜい数千円なわけですが、適正価格で販売するよりも、権威づけをして高額にしたほうがよく売れます。極端な数十万円や数百万円の価格で売れることさえ珍しくないのです。
この場合は特定の思想的なものや、宗教的なものであることが多いですが、一概に詐欺と断定できるわけではありません。一般的には「霊感商法」と呼ばれるもので、これは詐欺罪などの刑法的観点から断罪するのが難しいとされています。
日本では、憲法で「思想」「良心」「宗教」などの自由が保障されていますし、民法でも「契約自由の原則」というものがあります。この観点に立った場合は「ダイエットに利く」とか「ガンが治る」などを謳った「水素水」を扱ったビジネスも搾取ビジネスに入るかもしれません。
よく「水素水が健康によい」という話を聞きます。しかし、水素水の定義や濃度、つくり方などは曖昧で、じつは何をもって水素水と呼ぶのかハッキリしていません。もちろん、ここで水素水自体を100パーセント否定する意図はありません。ただ、医学的に水素水の効果を証明する信頼性の高いデータはないのです。仮にあったとしても、それが完全に信用できるのか否かは難しいと言えます。
ましてや、ダイエット効果があるとか、ガンが治るとかいう実証データとなると、なおさらです。数珠や水素水に限らず、世間的によく聞く「マイナスイオン」や「ゲルマニウム」など、様々なものがあります。これらすべてを否定することはできない反面、盲目的に信じてよいとも言えません。